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花窗玻璃 シャガールの黙示  (ねこ3.6匹)

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深水黎一郎著。講談社ノベルス

仏・ランス大聖堂から男性が転落死した。地上81.5mにある塔は、出入りができない密室状態で、警察は自殺と断定。だが半年後、また死体が!二人の共通点は死の直前に、シャガールの花窗玻璃を見ていたこと…。ランスに遊学していた芸術フリークの瞬一郎と、伯父の海埜刑事が、壮麗な建物と歴史に秘められた謎に迫る。 (裏表紙引用)


深水さんの芸術シリーズ第3弾。
本作は今までとは構成を変え、フランス滞在中の瞬一郎が体験したある事件を、瞬一郎が小説におこし
た作中作として掲載している。内容のほぼ8割が作中作で占められていて、ちょっとしたチャレンジ作となっているのが特徴。さらにこの作中作が非常に凝ったものになっている。カタカナ表記を一切排除し、外来語すべて漢字で表記するという凄まじいもの。
たとえば、こんな感じ。

『前菜は赤茄子(トマト)の莫薩里拉乾酪(モツァレラ・チーズ)添えだった。絶好の條件(コンディション)で給仕するのはなかなか難しい。葡萄酒(ワイン)は赤霞珠種(カベルネ・ソーヴィニヨン)から作られた波爾多(ボルドー)で~』

ええい変換めんどくさい!!!ぜえぜえ(;^^A
もう覚えてないけど、ホラーか!!!と思うような凄い当て字もありましたぞよ。。

へえ~、こんな字を当てるのかあ、と思える言葉がたくさんあってなかなか面白い。かくいう自分、一時期国の名前の漢字表記を面白いなと思っていて(西班牙=スペインとか葡萄牙ポルトガルとか)、漢検の勉強の傍ら全部覚えようとしていた事があった。欧羅巴(ヨーロッパ)だけで飽きてしまって挫折したが^^;;だもんで、こういうの嫌いじゃないんだよね^^ていうか、総ルビだし読めないわけじゃない。
本来なら、余計な事しないで内容を良くしてよと思ってしまいそうだけど、深水さんはいつも理由を書いてくれるから納得出来るのよ。こうしなければいけない必然はないと思うけど。

で、肝心の魅素謎謎(ミステリ)部分もなかなか良かった。
最初の転落事件の秘密も着眼点が凄いなと思ったし、目因仕掛罠(メイントリック)の方も頑張っている感じ。夢空絵事(イメージ)が浮かびやすい。異国の事件を漢字まみれで語っているのにこれは凄いかも。シャガールの絵の隠された秘密も驚きだったし、最近何を描いてもハズさない作家になって来たねえ、深水さん。(※この段落の当て字はゆきあや作。自分がやると暴走族みたいだ^^;ほんとはどう書くんだろ?)

ただ、おおべしみの出演がないのはやっぱり残念。それでも漫才のようなやり取りが冴えていて、安定して来たかも。

                             (311P/読書所要時間3:00)