すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

この町の誰かが/A Death in a Town  (ねこ3.6匹)

イメージ 1

ヒラリー・ウォー著。創元推理文庫

クロックフォード―どこにでもありそうな平和で平凡な町。だが、ひとりの少女が殺されたとき、この町の知られざる素顔があらわになる。怒りと悲しみ、疑惑と中傷に焦燥する捜査班。だが、局面を一転させる手がかりはすでに目の前に…!警察小説の巨匠がドキュメンタリー・タッチで描き出す『アメリカの悲劇』の構図。MWAグランドマスター賞受賞第一作。 (裏表紙引用)


初挑戦・ヒラリー・ウォー
本当は1作目の『失踪当時の服装は』を読みたかったんだけど、レビューにこちらの方が読みやすいという意見が多く見られたので予定変更。シリーズものじゃないとこういう事が出来る。

本書はインタビュー形式。(貫井さん『愚行録』と同じね^^)
順番にクロックフォードの住人が被害者のサリーを語って行くという平凡なもの。住人も皆平凡だし、サリーも至って普通の少女なので、「実は。。」という暴露といった面白味がない。救いは読みやすさだが、飽きそうになったところで町の集会や刑事達の会議などが会話だけで記述されている章が割り込んで来る。
読みどころと言えば、人種差別がないはずのクロックフォードが、事件が起こった途端に黒人の少年を疑い始めたり同性愛の人物が追い詰められたりと人間の暗部が浮き彫りになってくるところ。平凡な田舎町の全ての人々が、隣人を、教師を、牧師を、身内を信じられなくなってゆくのだ。

ミステリ的にはうまみも推理もない。
構成や土地の特色を鮮やかに描き出したという点では評価したい。キャラクターにもジャンルも片寄っていないのである意味万人向け。

                             (353P/読書所要時間2:30)