すべてが猫になる

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ソウルケイジ  (ねこ3.5匹)

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誉田哲也著。光文社文庫

多摩川土手に放置された車両から、血塗れの左手首が発見された!近くの工務店のガレージが血の海になっており、手首は工務店の主人のものと判明。死体なき殺人事件として捜査が開始された。遺体はどこに?なぜ手首だけが残されていたのか?姫川玲子ら捜査一課の刑事たちが捜査を進める中、驚くべき事実が次々と浮かび上がる―。シリーズ第二弾。 (裏表紙引用)


姫川玲子シリーズ?、続編。

導入部はともかく、前作のサイコサスペンスに比べて随分と普通になった気がする。オカルト色もないし。ストーリーの核となるのは「父性」で、犯罪者や容疑者、刑事、様々な立場からの「父」を描き、切なくやるせない、情に訴えて来る作品だ。それゆえ、サスペンス的に凝った割にあまり瞠目すべき点が見られないのが残念なところ。リンカーン・ライムなら100ページで解決しただろう、なんて。

ところでやはりこの主人公の女刑事がどうもいけ好かない
事件よりも警察内部や刑事の人生を描く警察小説が最近主流になっているようだが、本書もその走りの1つとして特徴がよく出ている。玲子がこの男社会でいかに差別されず生き抜いて行くかよりも、カンで動く捜査方法に対する内部の批判にどう抗って行くかとか、彼女がどの刑事といい関係になるかという所に重きを置いた印象だ。彼女が警察での「女扱い」をまるで歓迎しているかのような立ち居振る舞いは確かに本書にしかない個性だが、好感度という点では微妙だろう。さらに敵対している日下の人となりもそれほど悪いとは思えず、主人公側に感情移入しづらいのだ。

しかし、過去に酷いトラウマを抱える玲子は、時に被害者の人格すらを憎む。復讐という腹の中の悪魔とどう対峙して行くかが彼女の人生の課題であり、深みとも言えるだろう。日下との関係も修復して来そうだし、徐々に徐々に悪くない感触になるかも。

                             (431P/読書所要時間3:00)