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今昔奇怪録  (ねこ3.4匹)

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朱雀門出著。角川ホラー文庫

町会館の清掃中に本棚で見つけた『今昔奇怪録』という2冊の本。地域の怪異を集めた本のようだが、暇を持て余した私は何気なくそれを手に取り読んでしまう。その帰り、妙につるんとした、顔の殆どが黒目になっている奇怪な子供に遭遇する。そして気がつくと、記憶の一部が抜け落ちているのだった―。第16回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞した表題作を含む5編を収録。新たな怪談の名手が紡ぎだす、珠玉の怪異短編集。 (裏表紙引用)


今回のホラー大賞3作品、全部読んでしまった。こちらは時代物、妖怪物という毛色が強そうだったので手を出さないつもりだったが、評判とお仲間さんの後押しにつられ読んでみた。

『今昔奇怪録』
まさに京極夏彦の世界。
それぞれの怪異譚が、作者のオリジナルだと知ってセンスを感じた。「三人相撲」や「ぼうがんこぞう」など、聞いただけでゾクッとしてしまう。纏まりがありなかなか良かったとは思うが、それぞれの怪異を一編のお話にして、連作形式とした方が実力がはっきり浮かんだのではないか。『巷説百物語』みたいになって話題になったのではないかと思うが。

『疱瘡婆』
時代物。ある豪商の三人の娘が、疱瘡に罹って死んでしまった。失意の旦那は、娘の為に金をかけた墓を建てるが、夜中に墓が荒らされてしまう。。疱瘡婆の仕業だろうか?
冒頭の猫の出産場面など、全体的に雰囲気が出来ていて怖かった。オチもうまく繋がりがあって良かった。これが一番好きかなー。

『釋迦狂い』
力士・釋迦ヶ嶽の伝説をモチーフに造られたお化け屋敷。アンドロイドシステムを駆使したそのアトラクションは、作り物とは思えない迫力だったが。。。
古い伝説と、現代アミューズメントの融合が面白い。これも好きかも。

『きも』
渡島が所属する研究室の培養用恒温器に、見慣れないシャーレが入っていた。始めは死んだ山木という操作者の霊だと噂されたが。。。
作者がバイオ大学の講師ということで、専門用語がバリバリでわかりにくいのだ。。
現実に起きれば衝撃的すぎる恐怖だが、文章から発せられる恐怖感という面ではいささか弱い。

『狂覚(ポンドゥス・アニマエ)』
被験者・干渉者・観察者・統括者の視点で描かれた実験作品。
夢が及ぼす身体への影響?その恐怖を描いたもの?狂って行く過程がなかなか。しかし読むのは辛い。


以上。
あまりバランスがいいとは言えないが、それなりに実力の片鱗が伺える作家さんかも。後半の二編を普通にしてくれればもっと評価が高かったのだが。。。妖怪や時代物、バイオホラーに興味のある方にはいいかも。

                             (214P/読書所要時間2:00)