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見えない凶器/Invisible Weapons  (ねこ3.4匹)

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ジョン・ロード著。国書刊行会。世界探偵小説全集7。

帰宅早々、予期せぬ伯父の来訪をきかされたソーンバラ医師は、洗面室に入った伯父に声をかけたが返事はなかった。ただならぬ気配に胸騒ぎを感じた医師が、居合わせていた警官とともにドアを破ると、伯父は頭部を打ち割られ倒れていた。室内に凶器らしきものはなく、ひとつしかない窓は環視のもとにあった。密室状況下、犯人は如何にして出入りしたのか、また如何なる凶器が用いられたのか。犯行手段が解明できないまま事件は迷宮入りと見えたが…。冷徹に計算された完全犯罪に挑む、科学者探偵プリーストリー博士の名推理。 (あらすじ引用)


こってこての英国ミステリ、ジョン・ロードに挑戦。
”退屈の代名詞”と言うレッテルを一時代前に日本で貼られていた作家らしい(笑)。その解説を読んだのは読了後だが、当たらずとも遠からずといったところか。

掴みは良かったのだ。登場人物の個性や関係性を語る前に早々と医師の義理の叔父が殺される。その現場にアダミンスター警察巡査リントンが居合わせていたという何とも嬉しい都合の良い展開である。お陰で目撃者や犯行不可能時刻に信憑性が生まれ、謎は消えた立方体状の凶器と犯人、動機に絞られるのである。シンプルかつスムーズな展開の第一部。
第二の殺人が起こるゴドフリー卿邸。第一の殺人と一見何の関係もなさそうだが、そんなわけはないのである。ここからシリーズキャラクター・プリーストリー博士の大活躍。元は高等数学の教授であったという博士は、地位を投げ出し研究と犯罪解明に人生を捧げるというなんとも優雅な人物である。

ウム、退屈である^^;
正直言って、「見えない凶器」の正体は読む前からバレバレである(笑)。なんといっても、家庭用冷蔵庫の普及率が3/4という時代のトリックである。犯行現場は洗面所である。もうアレしかないのである^^;
しかし、タイトルにがっかりしてはならない。このミステリが面白くなるのは犯罪者を指摘し、その人物を確保するまでの怒濤の終章である。プリーストリー博士の推理により、警察一同一丸となって犯人を追い詰めて行く様は爽快の一語に尽きる。動機と人間性、機会が一体となった佳作と言えよう。

しかし、解説で「ジョン・ロードは本当に面白いのか?」という証明に数ページを費やすのもご苦労なことと言えよう^^;最終的に絶賛するのだが、可哀想じゃないか。。え、作者が?解説者が?さあ、それは・・・。。。

                             (282P/読書所要時間3:30)