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10ドルだって大金だ/The Enormous $10  (ねこ4.2匹)

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ジャック・リッチー著。河出書房新社

結婚三か月、そろそろ妻を殺す頃合だ?財産目当てに妻殺しを計画する男を待っていた皮肉な展開をオフビートなユーモアをまじえて描く「妻を殺さば」、銀行金庫の中の“余分な”10ドルをめぐって二転三転する「10ドルだって大金だ」、迷探偵ターンバックル部長刑事シリーズなど、巧みなツイストと軽妙なタッチが冴える短篇ミステリの名手リッチーの傑作14篇。 (あらすじ引用)


前から読みたい読みたいと思っていながら、あまりにも面白そうすぎてなかなか手が出なかったジャック・リッチー。実はそういう作家さんは結構います。このミス1位の『クライム・マシン』が読みたかったのだけど、こっちが開架にあったので先に^^。
とにかく期待通り。こういう軽妙でテンポのいい、さらに100%オチにキレがある短編集が面白くないはずありません。どれもどんでん返しが利いているのですが、単に意外な犯人とかそういう狙いの入った感じでもないのですよね。あの人の裏の顔だとか、主人公の意外な変貌だとか。いい人も悪い人もステロタイプな感じなのですが、隣の家や会社で起こり得そうな、運の悪い人や人間的に愚かな人が一生に一回は経験する取り返しのつかないトラブルという印象を受けました。

収録されていた『キッド・カーデュラ』がシリーズキャラクターだった事に驚きです。ボクシング界に現われた怪人というお話なのですが、え、この人本当は探偵なの!?^^;なんか妖怪みたいなんだけど^^;;『クライム・マシン』でそちらが読めるようなので、これまた楽しみではありますが。

後半に収録されていた作品群もシリーズもののようです。急に同じパターンが続いたな、と思ったら警察の人間が私立探偵になりました、というターンバックルという主人公もののようです。これがまた普通の探偵ものと一線を画すというのか、いわゆる”迷探偵”。彼の推理はいつも外れます(笑)はりきってるし自信満々だし、なんか哀れだけど、憎めないし魅力的。特に『誰も教えてくれない』は彼のキャラクターを如実に現した傑作ではないでしょうか。かなりユルユルでありますが、そこが妙に気に入りました。

それにしても、この作家さんは最初不遇だったようですね。日本で『クライム・マシン』がまさかの大ヒット、それ以来どんどん雑誌で掲載されていた作品が発行されているようですが。相当たくさんの著作があるようなので、楽しみです。出来れば長編じゃなくて(あるのかな)短編集をどんどんお願いします^^