すべてが猫になる

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死者のための音楽  (ねこ4.4匹)

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山白朝子著。メディアファクトリー

…おばあちゃん、まるで後を追うみたいだったね。病院で、返事をしないおばあちゃんにむかって、話しかけてたよね。「ねえ、音楽は聞こえてる?」(「死者のための音楽」より)。怪談専門誌『幽』の連載で話題騒然の作家、待望の初単行本。 (あらすじ引用)


きゅぅぅぅぅん(><)。。
素晴らしく素晴らしい作品集に出会ってしまった。。。
久しぶりに本を読んでいて身体がぶるっと震えてしまったかもしれません。乙一さんの変名だという噂で読んでみましたが、たしかに乙一作品だと言われても納得出来る作品が数本ありました。前半の作品群は残酷で美しくて文章は簡潔でたしかに氏の作風だけど、自分が乙一の作品に一番感じるいびつな”コンプレックス”の部分が見られなかったので、「こりゃ違うな」と思いましたが。

ジャンルで言えば幻想ホラー。恒川光太郎ファンに薦めたくなりますね。少しいやらしいというかエグい要素は出て来ますが、この作品ならばそれが芸術として機能している気がします。自然や田舎の風景が、死体や怪物とバランス良く調和していると言ったら良いでしょうか。
特に贔屓として紹介させていただきたいのが、まずは『黄金工場』です。工場の廃液を浴びると生命体が黄金に変わるという不思議な作品。とにかくその描写に注目してもらいたいですね。犬が廃液に沈み、その姿を現すまでの緊張感といったらもう天才的です。サスペンスとしても秀逸であり、ホラーとして求めたい恐怖感が見事に成功を修めた作品。

一番気に入った作品で、乙一の「暗いところで待ち合わせ」を彷彿とさせるイチ押しが『鳥とファフロッキーズ現象について』です。あまり期待させないタイトルですよね(笑)。ファフロッキーズ現象とはなんじゃらほい、と言うわけでまあそれは読んで下さい^^ホラーとミステリーを融合させた切なく残酷な物語で、独創的です。キャラクターの背景を掘り下げるとはこういう事であり、必要最低限の表現で世界観を提示して見せろというのはこういう作品を言うのだ!うおー!!


作品さえ良ければ誰が描いたものでも問題ではないんです。が、その反面ファンとして知りたい気持ちがあるのも正直なところ。『百瀬~』よりもコッチを買えば良かったな(両方買えよ)。こういう作品に出会った時に半分思う「誰にも教えたくない」という気持ちと、読書好きに配って廻りたいという本音が拮抗しています^^とにかく、誰がどう評価しようと、この作品に痺れる自分ってまだまだイケてるよな、とニヤニヤする気持ちでいっぱいかな。