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七姫幻想  (ねこ3.8匹)

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森谷明子著。双葉文庫

秋去姫、朝顔姫、梶葉姫……、七つの異称を持った七夕伝説の織女。神代の大王の怪死をめぐる幻想的な第一話から、江戸時代の禁忌の愛を描いた最終話まで、遥かなる時を隔てて女たちの甘美な罪が語られる。史実、和歌、人間ドラマという糸を縦横に組み合わせて描かれた、まさしく絢爛たる織物のような連作ミステリー!(裏表紙引用)


「れんげ畑のまんなかで」で初めて森谷さんを読んだ時は期待していた程ではなかったという印象だった作家さん。こちらの評判は聞いていたので敬遠していたわけではないのですが、忘れていた頃に文庫化されました。いやあ、表紙がこんなに綺麗だと買うのに躊躇がなかったですね。

もちろん内容も素晴らしかった。文系の方なら抵抗なく入り込めるんじゃないかな。時代もの時代ものした感じではなく、あくまで史実を絡めて幻想的に悲恋や女の哀しさを描いているという内容です。フィクションとしても楽しめますし、実在の人物や歴史と絡めて感心しながら読むのも良し。おいらは時代考証とかは苦手なので、とにかく雰囲気とストーリーを楽しみました。それでもレベルの高さを感じる事は出来ますしね。読んでいたらなんだか機織りがしたくなって来たぞ。。

特に好きだったのは、一話目。古代のお話なのですが、ミステリー色が一番強かったのでは。昔は一人の男に何人もの女性が居ましたからねえ。大奥じゃないけど、やっぱりいつの時代でも女性にとっては只一人の恋人でいたいって言うのは一緒ですよねえ。他では、不貞の恋を隠すために着物を濡らしたり、生き物の死体を投げ込まれる嫌がらせを受けたり、そこにどんな人々のどんな気持ちがあったか、それぞれその裏で繰り広げられる優しさや嫉妬、その描き方が本当に情緒的なんです。

”ミステリー”だと足踏みする必要はありません。綺麗な恋愛物語として質の高いものをお求めならばぜひオススメしたい作品ですね^^和歌なども頻繁に挿入されているので、その方面がお好きな方もぜひぜひ。