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天使の囀り  (ねこ3.7匹)

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貴志祐介著。角川ホラー文庫

北島早苗は、ホスピスで終末期医療に携わる精神科医。恋人で作家の高梨は、病的な死恐怖症だったが、新聞社主催のアマゾン調査隊に参加してからは、人格が異様な変容を見せ、あれほど怖れていた『死』に魅せられたように、自殺してしまう。さらに、調査隊の他のメンバーも、次々と異常な方法で自殺を遂げていることがわかる。アマゾンで、いったい何が起きたのか?高梨が死の直前に残した「天使の囀りが聞こえる」という言葉は、何を意味するのか?前人未到の恐怖が、あなたを襲う。 (裏表紙引用)


おおお。。。こりゃすごい。
実は、貴志さんに未読本がありました^^;本書の存在は知っていたのですが、割と気持ち悪いお話だと聞いていたので腰がひけていたかもしれません。が、読んでみてなかなか好みの内容だということがわかりました!確かに、内容はかなり不気味で気持ち悪いです。アマゾンから帰って来た恋人がまるで別人のようになってしまい、過食症でみるみる太って行くというのは。。その原因解明がストーリーの肝なんですが、それとは別の角度で面白い興奮するお話だと言う事がわかりました。

あまりネタは割れませんが、人格と共に外見上で、ここまで人間を崩す、壊すというのは大変恐ろしく、そしてその描写力の凄さはさすが貴志さん。文章なのに思わず目をそむけたくなる具体的で緻密な描き方はどんな映像よりも迫力があってリアルです。あえてそこを描かず、目撃した人間の印象で恐ろしさを表現したりという技も見られますね。天使のモチーフも想像力をかきたてられますし。アマゾンという自分には未知の場所を持って来られた事でわからないものや知らないものに対しての恐怖が倍増します。この気持ち悪さ全開の長編500ページはかなり魅力的でした。
時には専門用語を羅列されたり、知りたくない知識を植え付けられかけたりと困ってしまう箇所もあるにはあるのですが。

貴志さんの本領であるホラー分野でありますが、ここでまたひとつ、別の恐怖観を見せつけてくれました。もちろん他の作品に比べて多少好みでは落ちますが、水準以上の作品だと思います。
でも、これ、苦手な人多いよね^^;