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真夜中のマーチ  (ねこ3匹)

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奥田英朗著。集英社文庫

自称青年実業家のヨコケンこと横山健司は、仕込んだパーティーで三田総一郎と出会う。財閥の御曹司かと思いきや、単なる商社のダメ社員だったミタゾウとヨコケンは、わけありの現金強奪をもくろむが、謎の美女クロチェに邪魔されてしまう。それぞれの思惑を抱えて手を組んだ3人は、美術詐欺のアガリ、10億円をターゲットに完全犯罪を目指す!が……!?直木賞作家が放つ、痛快クライム・ノベルの傑作。(裏表紙引用)



しつこいけど犯罪者が主人公となった愉快な小説は好きではない。付け加えると罪のない人を傷つけるものではないとしても同じ。なら読まなきゃいいのだけど、作家が伊坂さんとか奥田さんだったら読まなきゃ悪いじゃないか。。要は「面白い」という保証があるからなのだけど。

そういうわけですが、3人それぞれが出会うエピソードはなかなか良かった。一流企業の御曹司かと思いきや・・というミタゾウもそうだし、訳ありそうで性格の悪いクロチェもそう。まずこの3人に魅力があってそれなりの謎を持つことでこちらが興味を持てなければこういう小説は終わりだと思うから。
彼らの敵であるヤクザやマフィア、クロチェの父親も3人に負けないぐらいの個性の持ち主。クロチェの愛犬のドーベルマンやどんくさい弟などもいい味を出していて盛り上がる。あまりにもドタバタしすぎていているがまとまりがあって、ご都合主義という感じもしない。
欲を言えば、クロチェと父親との関係にもっとお涙頂戴のエピソードが待っていれば良かったかな。個人的にクロチェには最後まで好感は持てなかった。25歳で同性の友人がいない事の理由に「女子ってつるんでトイレとか行くでしょ」と言った彼女。一匹狼である事と世間知らずである事は同義なのではないかと説教の一つもしたくなる。25歳にもなれば精神的に自立している女性は少なくないぞ。。
まあ、そんな彼女も彼らと出会って少しは変わって行きそうだ。

普通にエンタメとして楽しむ分にはほぼ満点の作品だと思う。やっぱり好みではないけどね^^;