すべてが猫になる

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雲上都市の大冒険  (ねこ4.1匹)

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山口芳宏著。東京創元社

白のスーツを身にまとう眉目秀麗な荒城咲之助、学ラン姿に近未来的な義手を持つ真野原玄志郎。二人の名探偵と、わたし殿島直紀が挑む雲上都市の謎。楽園の地下に潜む、座吾朗とは何者なのか?そして連続殺人に隠された真実とは?気障で美形の探偵&わらしべ義手探偵。二人の名探偵が織りなす抜群の物語性と、ラストに明かされる驚愕のトリック。第17回鮎川哲也賞受賞作。 (あらすじ引用)


最近お仲間さん内で話題の山口さんに挑戦してみました。
貸出中の表示が消えていたので図書館の「や」コーナーへいそいそ行くと、なぜでしょうありません。
オムリスで検索したらちゃんとありますよ?「返ってきた本 ~貸し出しできます~」コーナーも目を皿にして探しましたがありません。「そうだん」のコーナーで人の良さそうな若い司書さんに調べてもらいましょう。司書さんがパソコンをカタカタカタ・・「少々お待ち下さいね~・・・・・・・・・
ああっ!!!こ、これは!!」「ど、どうしました!?」「この資料は昨日返却になりまして、まだ書庫の方にあるかもしれません。探して参ります。」「お、お願いします(そんな大声出さんでも^^;)」というわけで司書さんがゆきあやの前を早足で行ったり来たり。(その度に「少々お待ちを!」と声をかけてくれる。10分経ち、さすがに「もう予約しますからいいですよぅ~」と言いたくなったがその隙も与えない必死ぶり。がんばって!しばらくするとカウンターに司書さんが本を「ドサーーー!!」と置いて「み、見つかりました。。」と汗と共に現れる。ゆきあやのくどいほどの感謝の意についてはサラッと流し、これは仕事熱心というより根っからいい人なんだろうなとほっこり。
ありがとう。苦労かけたな。。


さて、前置きはさておき感想を。
はっきり申し上げて、たいへん好みでございました!!「少々ヘンな探偵小説」という筆者の紹介文があったのでびくびくしておりましたが、(文章がヘンという意味だとたぶん合わないので)設定のおかしさ、キャラクターのおかしさ、事件の摩訶不思議さ共に満点でございました。地の文もユーモアがあっておかしいのですが、まず探偵役(の一人)である真野原が最高です。少し御手洗潔を彷彿とさせましたが、ワトスン役の殿島に柱時計を押し付ける出会いから始まって、セミや綿飴についての講釈を垂れ周囲に迷惑をかけつつ翻弄するこの男。だいぶ面白いぞ。。。^^;
と、思ったら今度はメルカトル鮎みたいなキザったらしい本物の探偵が出て来た!!(笑)二人いるのか。。ますますどっかで見たような小説だな。。

それはさておいて、事件の方はそのキャラクターの軽さからは不似合いなほど陰惨です。二十年牢屋に監禁されていた男の密室脱獄から始まって、列車轢断事件、首切り事件と恐怖と謎は次々と襲い掛かって来ます。反対に回す電球の謎や医療費や遊興費無料の真実、雲上の楽園都市の謎も合わさっているわけですから、こりゃ探偵も二人必要だわ、と思わせる濃い内容。
トリックについては「おえええええ^^;;」と言いたくなります^^;;;こんな凄いトリック見た事ない。。ここまで行くと面白さの方が際立ってリアリティなどくすんでしまいそうです。
ただ、真犯人の造詣についてはアンバランスな印象も。無意味だった事件もありますし、犯人の発言に矛盾を感じたのも後から信憑性を加えるために付け足したんじゃないかと思うわけで。

ラストにお遊び的なオチが付いてありますが、個人的にはこういうのは好きです。性格の悪い探偵の方が好みなので^^;
とにかく、楽しめました。正直言うと、なぜかこちらがはしゃぎきれなかった部分もあるのですが、今後もっともっと突き抜けた作品が出れば嬉しいな。まだデビュー作だもんね。島田荘司氏の選評で、
「まだ受賞も出版も決まっていない段階で、当作はシリーズ化すると作者は堂々と宣言し、日本行儀論からは唖然とするこの不行儀ぶりは、当方に授賞を決心させるに充分だった」という面白いエピソードを発見。さて単なるビッグマウスか大物か^^;今後に期待しませう。