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対話篇  (ねこ3.6匹)

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金城一紀著。新潮文庫

本当に愛する人ができたら、絶対にその人の手を離してはいけない。なぜなら、離したとたんに誰よりも遠くへと行ってしまうからーー。最初で最後の運命の恋、片思いの残酷な結末、薄れてゆく愛しい人の記憶。愛する者を失い、孤独に沈む者たちが語る切なくも希望に満ちたストーリーたち。真摯な対話を通して見出されてゆく真実の言葉の数々を描いた傑作中編集。(裏表紙引用)



3編の哀愁漂う恋愛小説が収められていますが、これは”恋愛もの”と一括りには出来ない作品集ですね。金城さんらしい暗さと希望の光に満ちています。暗さがあると言っても、作風はストレートだな、と感じる健全な小説ですのでご安心を。

『恋愛小説』
大学時代に知り合った友人は、”死神”だったーー。彼と親しくした者は、必ず死んでゆく。不幸を背負った友人が、本当の恋に落ちたときーー。
『永遠の円環』
残り少ない命を、病院のベッドで過ごす”僕”。彼には、死ぬまでにどうしても殺したい相手がいたーー。そこで現れた知人のK君に協力を求めると。。。
『花』
動脈瘤がいつ破裂してもおかしくない病を抱えた主人公。逆行健忘を恐れ悩む彼は、紹介で鹿児島まで行くドライバーのアルバイトを引き受ける。そこで旅を共にする事になった鳥越氏には何やら事情がありそうで。。。


あらすじをざっと見ていただいただけでも、これが普通にふわふわとピンク色をした恋愛小説ではないと言う事が伝わりそうです。どの主人公も病を抱えていたり心に傷を持っていたり。そんな立場の人間が、一生に一度の恋をします。その恋はどれも波瀾万丈で、その経験や思い出がそれぞれの人生のこれからの道標となっているのが共通点でしょうか。人と人の”対話”がお話を展開させているのが特徴で、思わず引き込まれてしまいます。哀しさを漂わせながら、決して絶望ではなく未来がある事を前提に収束していく物語たちは、陰惨な雰囲気ながらどれもキラキラとしています。う~ん、いい本読んだ。