すべてが猫になる

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飛鳥のガラスの靴  (ねこ3.6匹)

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島田荘司著。光文社文庫


映画俳優の大和田剛太の自宅に、差出人不明の郵便小包が届いた。なかから、塩漬けにされた剛太の
右手首が…!剛太自身は行方不明のまま、事件は迷宮入りの様相を呈した。警視庁捜査一課の吉敷
竹史は、この管轄違いの事件に興味を抱く。彼は主任と衝突しながらも、敢然とこの難事件に
挑むが…。(裏表紙引用)



結局読んでます。
てっきり吉敷&通子のラブロマンスが主体で進むお話かと思ってましたが、違いましたね。
最初に通子さんがまた理の通らない事を言い出し、吉敷さんが遂にキレるという進展を見せたかと
思ったら、それっきりでした。

今回の事件は怪奇的で、いくつもの関係なさそうな事柄が繋がり合い、なかなか面白かったです。
450ページ程の力作なので、吉敷シリーズにしては長丁場。読みごたえがありました。
人格者である大和田が怨恨で殺されたのだとこだわる吉敷さんと、対立する主任との確執が
止めようもない程燃え上がり、「解決出来なかったら辞表を出す」と宣言。吉敷さんが
「日本型犯罪」を分析し続けるのと並行し、警察内部でのつまらないプライドを持った人種への
疑問が吉敷さんの内部で膨れ上がり、『奇想、天を動かす』で見せた熱い吉敷の復活です。

ただ、やはり社会派というのは関係のないエピソードや人物が出て来ないので、その辺の楽しみが
ないのですよね。動機探しと犯行方法、アリバイ崩しのみだから。
しかし、珍しく今回はさすがに挫折してしまいそうになる弱い吉敷さんが痛々しかった。
もちろん小説だから、解決するってわかってるんだけど^^;、クライマックスである事実に
気付き、遂に決め手を探し当てた吉敷さんを見て、本当に胸が熱くなりました。
吉敷さん、がんばったがんばった。