すべてが猫になる

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聖女の島  (ねこ5匹)

皆川博子著。講談社文庫。


砲弾に砕かれて坐礁し、そのまま化石となった巨大な軍艦のように見える孤島に、修道会のつくった
矯正施設がある。売春、盗み、恐喝等の非行を重ね、幼くして性の悦楽を知った放恣な少女たちが、
惨劇の幻影におびえる聖女の下に集められている。そして、あの悪夢が……。謎と官能に満ちた、
甘美な長編恐怖小説。(裏表紙引用)



ふんがーー!!!v(T_T)v好きだ~~~好ぅぅう~~~きぃぃぃ~~だぁぁぁ~~~

この狂った世界はなんだ~~!この美しく禍々しくいやらしい、コワい世界はなんだぁぁ~~~



……と、いうわけで。実は最近、おいらの敬愛するbeckさんが皆川さんを絶賛しておられる事に
いてもたってもいられなくなり、早速「何か1冊」と借りて来た。古い作家さんなので、とにかく
たくさん蔵書があり、「……beckさんが褒めてた本、なんだっけ^^;」とわけがわからなくなり、
とりあえず色々とパラパラしてみた。なんか著者紹介を読むだけで、色々な賞を獲っている凄い
作家さんだとわかる。そして、「これ、絶対自分好みだ」と確信し、思い切って2冊借りた。
一応おいららしく、1冊はミステリーにしてみたというわけ。
で、興奮の読後、例によって検索してみたら。
な、なんと、これつい最近復刊された「綾辻・有栖川復刊コレクション」講談社ノベルス
1冊ではないか!!本屋で気にはしていたのだけど、読む気はさらさらなかった自分を
過去に戻って殴りたい。。そちらでは、恩田陸さんが素晴らしい解説を書かれているらしい。
文庫での解説はやはり綾辻さん。結構ミーハー調で書かれた楽しい解説なのだけど、
自分が感じた事が間違いではなかったな、と心の中で綾辻さんに熱いキッスを贈ってしまう。


とにかく、この物語は逐一どこがどういいのか、を説明するのは野暮な気がしてしまう。
どう感想を書いても、この世界を伝えきれないと思うから。非行少女28人を集めた修道会の
矯正施設、というだけでゾクゾクする設定なのに、さらに死んだはずの3人の生徒が誰だか
不明なまま、点呼をとると31人に増えているのだ。
これだけ書くと普通のホラーかミステリーのようだが、これがまた全然こちらの予想した
展開になってくれない。修道女と女園長の入浴シーンも衝撃だが(笑)、登場する
”お父さん””お母さん”役の大人たちの会話、思考がどうにも歪んでいる。
続いて生徒31人の運動会や、おかしな丑の刻参りなど、生徒たち一人一人は「不良」という
名の無個性なのに(生徒の台詞がほとんどないのだ、この本)、団体になった途端恐ろしい
パワーを生み出す。偽善と反抗、愛情と憎悪。そのバランスが実に見事で、どの人物も
理解不能な怪物のような雰囲気を醸し出す。

それでいて、ミステリーの謎が氷解する時の恍惚感も得られる。
創りもの、幻想物語だと言ってしまえばそれまでだが、とにかくこの物語でしか堪能出来ない
リアリティには鳥肌が立った。
文句なし、今年一番の”当たり本”である。


蛇足ながら、本書は”万人受け”しない、読者を間違いなく選んでしまう作品だと思う。
受け付けなかった、どこがいいのかわからなかった、という人はもちろんいるだろう。しかし、
誰かの琴線には絶対に触れる。そんな作品です。ゆきあやの好みにどんぴしゃりだったという
(麻耶以来か?)解釈で、もし参考いただけるなら冷静なご判断をお願いしますね^^。

beckさん、本当にありがとう^^次おすすめの『猫舌男爵』に行きます♪