すべてが猫になる

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密室は眠れないパズル  (ねこ3.6匹)

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氷川透著。原書房


エレベーターの前で胸を刺された男は「常務に、いきなり刺された」と、犯人を名指しして絶命した。
”殺人犯”は、エレベーターで無人の最上階へ向かうところを目撃される。電話は不通、扉も開かない。
ビル内には犯人を含めて九人だけ。犯人は逃げようとせず、とどまっているのかーー。やがて最上階の
エレベーターは下降を始めた。そして扉が開く。そこには、背中を刺され、血まみれで息絶えた常務が
倒れていた。ーーいったい誰が、いかなる方法で殺したのか。常務が犯人ではなかったのか。
積み重ね、研ぎすました論理の果てに行き着くのは八人の中の一人。(あらすじ引用)



ひっさしぶりに氷川さん読んでみた。もうここまで来たら絶対文庫にならないしね。しかし、
ネット本屋で本書を検索したら「この商品を買った人はこちらにも興味を持っています」一覧で
黒川智花フォトエッセイ集』が出て来られても反応に困る^^;

久々なので、この文章の読みにくさも懐かしさが湧くばかり。初期以外の氷川作品と比べればなかなか
本格テイストまっしぐらで面白い範疇に入るんじゃないか。
外部から遮断され、脱出も不可能な状況で死体が二つ、残った人間の中に犯人がいるーーという
危機的状況。


なんと、これだけの数の社会人が一堂に会して一人も(被害者含む)携帯電話を持ってません^^;
2000年なら何人に一人かは”持たない主義”の人もいただろうけど、全員かぃ^^;;

しかも、大手か中堅かわかりませんが6階建ての自社ビルを有している会社だと言うのに、
消防法を無視し避難器具が設置されておりません^^;;;;;

さらに、窓が開くのに「大声を上げて通りがかった人に助けを求めよう」という提案は
「このあたりはこの時間になると全く人が通らない」という決めつけで一蹴されております^^;;


ああ、なんて面白い本なんだろう^^;

本書は、島田荘司氏推薦の作品だそうです^^;


冒頭で氷川透が「フーダニット」の重要性についてあれほどまくしたてており、編集者が動機の
価値についてあれほど主張しているのに、あまり生かされておりません。ドラマがありません。
ころころ語り手が入れ替わる割に、罠らしきものすらありません。騙された感がありません。

せめて、一歩手前で披露されている真相が真実だったらばこういうロジカル一辺倒の作品とは
相性が良かったと思うんですが。


しかし、氷川さんの作品は好きなので(ほんとか^^;)別に腹が立ったわけではありません。
面白く読みました。いや、本当に。