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幽体離脱殺人事件  (ねこ3.6匹)

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島田荘司著。光文社文庫


警視庁捜査一課・吉敷竹史の許に、一枚の異様な現場写真が届いた。それは、三重県の観光名所・
二見浦の夫婦岩で、二つの岩を結ぶ注連縄に、首吊り状態でぶら下がった中年男の死体が写っていた。
しかも、死体の所持品の中から、吉敷が数日前、酒場で知り合った京都在住の小瀬川杜夫の名刺が
……!?(裏表紙引用)



はっはっは、なんだこれは^^;;
吉敷さんの登場が少ない上に、有り得ない捜査手段を最後にとっているのでいつもの吉敷シリーズの
感触は全然しないですね。警察の捜査もいまいちやる気がないし(それは吉敷さんの考える事が
人並み外れているからそう見えるのかもしれぬが。。)よく解決したもんだ。

雰囲気を言うと、先日読んだ名短編集『毒を売る女』の表題作に通じるものを感じましたよ。
20数年に及ぶ親友同士の確執、嫉妬、劣等感、羨望、ライバル心。それでも離れられない
女同士の不思議な友情。ここに出て来る陽子という女性は自意識過剰で妄想癖があり、鬱病
発症している状態で登場するのでかなり読んでいるのがキツいです。しかし、ここまで重度では
ありませんが、自分も色々なタイプの友人がいるので共感出来るところは多かったですね。
何度喧嘩しても、しばらくたつと愚痴を言える相手がその人しかいないので我慢できなくなって
電話してしまったり^^;女同士の友情を保つには多少の見栄と、発散出来る会話が絶対必要なのだ。

しかし、主人公である輝子の夫の最後の言葉には心底腹が立ちました。
男女関係というものは、どちらかに忍耐がないと成り立たないのかなあ。ギブ&テイクで育って
来た自分はいくらか我が儘な面があるのかな。


まあ、ミステリとしては特筆すべき点はまったくありませんでしたが、こういうスタイルのお話は
結構好みだったのですいすい読めました。今回も吉敷さんは名台詞を吐いたし、島田さん独特の
思想も炸裂していて刺激的な一品。