すべてが猫になる

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第4位 『人形はなぜ殺される』 著/高木彬光

もう4位か。我ながら凄い作品を持って来たのに、4位ってなんか中途半端感がありますね^^;
本作は、国内ミステリーベスト1、2を争うと評判の作品で、さすがに今度こそはこの4位に異論は
なかろうと思われます^^
まあ、とは言ってもわたくし、高木さんの作品を記事にするのは4年目にして初めて、という
体たらく。それもそのはず、おいら高木作品は4冊くらいしか読んでいないのです。一応理由は
ありまして、実はこの東大出のインテリ美男子探偵、神津恭介があまり好きではないという……^^;
嫌いなタイプでもないのですが(探偵として)、容疑者に対する言葉の一つ一つがなんだか
キツいんですよ。本書で引用すれば、「僕はシャーロック・ホームズの再来だと言った覚えはない」
とかね。売り言葉に買い言葉的な会話が多い。
後は、文章。陰惨な雰囲気や探偵小説ならではの格調高さはそれこそ十二分にあるのですが、
横溝正史江戸川乱歩に比べると表現などに若干の物足りなさを感じます。


おっと^^;、こきおろすつもりはなかった^^;;;
まあ、それでも自分のオールタイムベストで4位に輝くぐらいだから、この作品にはもの凄い
思い入れがあります。好きというのもおこがましく、神棚に飾って「ははー」と拝みたくなるほどの
別格の作品です。本当に、麻耶さんや島田さんが束になってかかって来ても敵わないくらい。




新作魔術会で、硝子の箱からマリー・アントワネットの”首”が盗まれる。作家松下研三は
神津恭介を呼び寄せるが、その後発見された殺人現場では首のない死体と、消えた人形の首が。
殺人の起きる前に必ず殺される人形の意味とは。。これは殺人予告なのか?神津恭介への
挑戦なのか?



トリックが凄いんですよ。。。

作中のプロローグ。作者による「なぜ人形は殺されるのか」という読者への問い。なぜタイトルに
これを持って来たか。
その姿勢は挑発的で自信が漲り、二度にわたる”読者への挑戦状”にヒントを交えあくまでフェアに。
一度目の挑戦状の後の章では少しずっこけますが^^;、神津恭介をうならせるほどの巧緻に長けた
犯人の明晰な頭脳には恐れ入るばかりです。
特に読者をうならせたのは、第二の殺人の人形と人間の轢殺事件のトリックとその理由。
現代では不可能なトリックでありますが、不気味さと計算高さが合わさって、探偵小説として
演出と理論で完璧とも言える出来映えを見せてくれます。


なんと1955年発表の作品です。(「大誘拐」より古いぜ)もちろん時代の古さは感じますが、
それがかえって怪奇的雰囲気や生活感を排除した冷徹さの徹底に繋がり、本格推理好きの心を
満足させてくれることでしょう。