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Miss You  (ねこ3.7匹)

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柴田よしき著。文春文庫。


有美は26歳、文芸編集者。業界ではかけだしながら生真面目さと熱意で仕事は軌道にのりつつある。
しかし同僚の女性が殺され、元流行作家の妙な電話を受けてから有美自身も狙われはじめた。事故か。
人ちがいなのか。婚約者、新人作家、流行作家などの輪が平凡なヒロインを目眩く翻弄する。
(裏表紙引用)



おお。これは最近読んで来た柴田作品の中ではなかなか良い部類に入るのでは。
出版業界の内輪話がぞくぞく出て来ます。原稿を取るための戦術や新人作家が賞を取るまでの経緯
などが赤裸々に語られているので、本が好きな人にはたまらない内容ではないでしょうか。
主人公が次々と命を狙われ、作家に翻弄され、立ち向かって行くストーリーも手に汗を握る
面白さです。特に、婚約者の元に届いた物の卑劣な罠とむきだしの悪意にはゾクゾクしますね。

個人的には有美のような生真面目な女性は苦手ですが。
汚い業界の実態を知ってもその中に染まらない点や、婚約者への忠誠心のようなこだわり。
彼のいやらしく情けない真の姿を知り、自分を信用もしてくれず、当の有美自身が「彼とは
価値観が違いすぎる」と悟ってまでいるのに、誠実に彼に応えようとする。別れるにせよ
関係を続けるにせよ、自分ならきっぱり縁を切ってしまうと思うのですが。。

それはさておき、本作はミステリーとしては感心出来た作品ではありません。
伏線らしい伏線もなく、重要な人物が登場するのが遅すぎる上にネタを詰め込みすぎて
一部の登場人物の処理があやふやになっています。

ただ、「柴田よしきのお薦めを教えて」と聞かれればコレを挙げようかなと思う。。
恋愛ものとして、仕事の奮闘記、成長ものとして読むなら本書を選んで間違いない。