桐野夏生著。講談社文庫。
「私の中の何かが死んだ」出所を心待ちにしていた男が四年前に獄中自殺していた。何も知らされ
なかった村野ミロは探偵を辞め、事実を秘匿していた養父を殺しにいく。隣人のホモセクシャルの
親友。養父の盲目の内妻。幼い頃から知っている老ヤクザ。周囲に災厄をまき散らすミロを誰もが
命懸けで追い始めた。(上巻裏表紙引用)
あいや~~。失敗しました。。これ、シリーズものだったのですね。。
あとがきを読んで初めてこれが「探偵ミロシリーズ」と呼ばれている事を知りました。。しかも、
この『ダーク』は今まで探偵として活躍して来たミロの成れの果て、というか^^;
今までの読者が度肝を抜いた内容だとか。凄くクセのあるキャラ達も全部おいらにとっては
初めましてだし、今迄ミロがどんな男関係があったのかも養父とどんな関係だったのかも
知らないし。。
ところで、内容ですが。
「残虐記」ではさんざん暴言を吐いていたわたくしですが、これはどちらかと言うと
「グロテスク」寄りの作品ですね。こっちは作り物100%だから面白いという。
実は、あとがきで全部自分が言いたい事を上手に書かれちゃってるもんだから、他に
付け加えたい言葉がないんです^^;
「癒されたい、泣きたい、という甘ったれた読者」ですいません。みたいな^^;
書かれている通り、ミロという女性は共感も何も出来ないふざけた事ばっかりする人間で、
人は殺すわ偽造パスポートで出国するわ犬は殺すわ金は盗むわと大暴れです。
そもそも、自分は物語の始まりからミロのやっている事が理解不能すぎるというか。
自業自得を絵に描いたような女性。自分も長年生きて来て、それこそ色々なおバカさんや
様々な境遇の人と出会って来たけれど、さすがにこのレベルはないわ^^;;;
養父を殺す事も、出国する事も、「そこまでしなければならないほど追いつめられた境遇」
には映らない。。。気が悪いとか、共感出来ないとか、そんな立ち位置で読む本じゃない。
哀れですらない。カティさんの仰ってた、「ここまで行くと笑える」という意見こそが
自分の感想にぴったり来る。
しかし、桐野さんは堕ち切った女性を描くのが上手すぎる。本書に出て来る悪魔のような
久恵という盲目の女性の描き方なんて、真似出来る人はいないんじゃないだろか。
この物語の引きを読むと、今までのシリーズよりはむしろこれの続編が読みたいなあ。
下巻でミロがとんでもない決断をして(今に始まった事じゃないけど)、しかも実行して
しまった^^;結末のミロの心理の流れを読むとまんざら捨てたもんじゃないのかな、
なんて希望を持ってしまったのだけれど。