すべてが猫になる

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二枚舌は極楽へ行く  (ねこ3.6匹)

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蒼井上鷹著。双葉ノベルス。



コージーミステリという言葉を久しぶりに聞きました。以前より店頭やべるさんの記事などで
気になっていた作家さんです。この可愛らしくとぼけた味わいの表紙から、一体どんな作風なのか
不安半分期待半分で購入(したまま積読)。11編収録の短編集です。

一編目の「野菜ジュースにソースを二滴」を読み終わって、すぐに作風を理解しました。
自分の思っている”コージーミステリ”とは大幅に違い、どちらかと言うと新津きよみさんの
ような、ブラックユーモアの光る軽妙なホラーに近いように感じます。
事故死した友人に毒を飲ませていたのは誰?といったものから、表題作のように
解雇された男性を殺した人間を探す、といったミステリー仕立てのものも含まれており、
最後は大きな”オチ”で切れ味良く終わらせるといったスタイルが全編共通しています。

こういうの、大好きなので「当たり」本ですね。
それでいて大騒ぎするほど嵌まりきれなかったのも事実ですが。どの作品もひねりが利いていて
先を読ませず、冒頭から引き込ませる力量とバラエティ豊かな想像力には感服したもので、
実力のある作家さんだというのは間違いありません。
しかし、なにか一つ、夢中になるだけの何かが足りない。
どこかで読んだようなオチのものが多かったのと、中編になると途端に自分の「読む」気力が
持続せず、長編も読みたい、という気になる作家さんではありませんでした。

でも、たぶん積読本が消化し終わったら集めるだろうな。。。