すべてが猫になる

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コッペリア  (ねこ3.8匹)

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加納朋子著。講談社


その人形は官能的な肌と壊れた心をもっていた。天才的な人形作家、人形を溺愛する青年、
人形になりきろうとする女優、そしてパトロン。人形に憑かれた人々が織り成す情念のアラベスク
(あらすじ引用)



しら菊さんが絶賛していらしたので、まずはこれから。


構成は時系列をばらばらに、章ごとに違う人物の一人称で描かれた凝ったもの。ミステリーとして
トリックも読者の頭が混乱しないほどに鮮やかで見事。その美しいほどの仕掛けに、伏線に、
もちろん感心しましたが、ゆきあやが終始夢中になっていたのは”文章の綺麗さ”と、
まるでホラーのような、古い映画のような、”非現実的でクラシカルな雰囲気”。
北村様を読んだ時ほどの感動ではありませんが、おいらは文章の綺麗な作家さんが好き。
とてもそうは思えない記事が数日並んでおります昨今ですが^^;、まあそこは流して流して。
文章から風景が浮かぶもの、お料理の匂いが立つもの、思わず背後を振り返ってしまうもの。
色々あるけれど、一番好きなのはやはり感情表現の比喩に優れ、風刺的かつ情緒漂うもの。
加納さんの作品はそれだと思った。

”人形”というモチーフを扱い、様々な”人間”を描いている。
人形の運命や生き様を描いた作品でありながら、あくまでも芯となっているのは
トラウマを抱え、人形に取り憑かれてしまった人間の心。
繋がって行く心と心。
全ての登場人物が人形に囚われてしまったように映し出されながら、
結局人間と関わって生きて来た事に全ての登場人物が気付かされる。

いつでも人の心を掴むのはこういう小説かもしれないな。


次「魔法飛行」→「モノレールねこ」と行くので、記事随時よろちく^^v(誰宛だ)