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わくらば日記  (ねこ4.1匹)

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朱川湊人著。角川書店


昭和30年代を生きる二人の姉妹。姉は美しく、不思議な能力の持ち主だったーー。今は亡き姉との
温かく切ない、様々な事件を通して語られる数々の思い出。忘れかけた何かが現代人の心に痛い、
5編収録の連作短編集。



うわ~~~~~~~ん(T^T)。
えがったです、たいへんえがったですぅ。

なんだか連続して読むとこの高レベルに慣れてしまって、正当な評価になるかどうかといった
危惧もありますが、もっと上げても良かったかな。。みたいな。これが初めて読んだ朱川さん、
だとしたら・・・と仮定してみても、だって実際初めてじゃないんだもん^^;難しいス。
細かい時系列ではどういう順番なのかそこまで考えなかったのですが、登場人物が一貫して
同じ(主要キャラ)で、全て手前の事件を踏まえた上でのお話となって行くので
長編と同じような感覚の感想でいいかもしれません。


表紙のイメージそのまま、戦後の昭和の雰囲気と生活感がたまらない。この時代には
生まれていないのだけど、懐かしいという形容がぴったり来るのはなぜだろか。
土地も時代も違うのに、読む者それぞれの幼い頃の記憶や匂いが呼び覚まされるというのか。

そして実はこの作品全編通して少しの戸惑いが起きる。
主張が一貫しすぎているというのか、答えのないはずの事柄が全てこの少女の語り口を借りて
断言、という形を取られているのです。どんな事情があっても犯罪は裁かれるべきか、
事情があり、根が善人な人間のやむを得ない犯罪ならば酌量されるべきか。
はっきりとした答えがどの作品にも描かれているのに驚きました。
これが作風、世界観であり一人の少女の人格の表現ではあるのでしょうが。

だけど何か揺るぎないものを待っていたわけでもない。
この作品の感想はどんな人にでも難しいはずだ。