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図南の翼 (ねこ4.3匹)

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小野不由美著。講談社文庫。

何不自由なく豪商の娘として育った少女・珠晶は先王の歿後、荒廃した恭国を憂い自ら王となるため
蓬山を目指す。侍女の衣を失敬し家を抜け出したものの麒獣をだましとられ、苦難の末に辿り着いた
蓬山には自らを恃む人が溢れていた。だが、最後に麒麟が跪いたのは……。(裏表紙引用)
十二国記」シリーズ、第5弾。


ああ自分も麒麟の背に乗せてくれ。自分もどこかへ飛んでしまえたらいい。でもその動機は
何かと言ったら、珠晶のように王になりたいだとか、国の荒廃を憂いてだとかそんな立派な
もんじゃない。当たり前だ現実と小説を混同するなと思うが、実際自分は珠晶よりは確実に
貧乏だしお姫様に比べたら絶対恵まれてないんだよな。でも彼女は行っちゃったんだもんな。
12歳の時自分何してたよ。。最初は苦労知らずのお子様が何のたまってるんだ、と
反感を持つようなこの少女が、こんなに変わってしまうなんて。でもきっと変わったというより
元からそうだったのかも。作風は今までと同じ、未熟で世間知らずの少女が成長して最後に
人望を得て国が動くほどの影響を物語に与えるというもの。飽きないなあ、こればっかりは。

自分が豪華な食事を残す事で恵まれない人にどういう影響があると言うのか、
全ての人々に平等に与える事は不可能で、自分が恵まれているのも貧富の差も
自分のせいではないと珠晶は言う。それで「国を自分が変えてみせる」か。
わかっているけどどうしようもない、だから自分が王になると言う。
出だしはわけがわからなかった彼女の思惑は物語でやっぱり踏みにじられ、時には利用され
諭される。もちろん彼女も成長するのだが、いざ大きな障害に突き当たり、己の責任と知恵で
乗り越えなければ行けなくなる茨の道。

その時、周りの大人は何をしたか。珠晶はどう動いたか。
いつでも正しいのは困難を選んだ方だ。
最後に麒獣が誰を迎えに来るのかは、もう私にも明白だったね。