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黄金色の祈り (ねこ3.9匹)

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西澤保彦著。文春文庫。

他人の目を気にし、人をうらやみ、成功することばかり考えている「僕」は、高校卒業後、アメリカの
大学に留学するが、いつしか社会から脱落していく。しかし、人生における一発逆転を狙って、
ついに小説家デビュー。かつての友の死を題材に小説を発表するが…作者の実人生を思わせる、
青春ミステリ小説。(裏表紙引用)


別に不快ではない。久々に純粋に面白かった西澤作品だった。
自意識過剰でカラ周りばかりしている主人公のアイタタな人生に夢中になって、
気がついたら「え、もうこんなに読んだのか自分」と驚いたりもした。
この主人公は私から見て「呆れ、イライラする」というタイプではなかった。
極端だとも思わない。胸の内って具体的に書いてしまうとこんなもんじゃないのか。
次々と所属する吹奏楽部で担当パートを替えたり、将来の志が甘かったりと
お子ちゃま感は過度にあるのだが。
だって元から作家の特性と噂から「未熟な主人公が経験を経て成長して行くお話」ではないな、
とはわかっていた。注目するのはそれをどこまで描いてくれるか、ともちろん謎解きの部分。
おいらこれは満足だ。主人公の心理をどこまでも追求しているわりに肝心な「顔」が
見えて来なかったのもこういう真相なら納得出来る。ミステリーならば、
主人公が急に小説家を目指すという展開もこれなら無理がない。
細かい点を挙げれば、ある人物が主人公に対して持っていた感情がどうもその人間の人物像と
一致しないのが惜しいが、これは人それぞれだろう。

とにかく相当面白く読めた。
不快感どころか、それこそ自分を顧みて考える時間まで得る事が出来たし、
ラスト近くでは目がくらみそうになったのは貴重だ。

と言う事で、新品で買っておきながら数ヶ月も本棚で眠らせていた本書を読む機会を今与えてくれた
カティさん、べるさん。本当にありがとうです(*^^*)v
またよろしくねv ← えー