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ベルカ、吠えないのか? (ねこ4.6匹)

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古川日出男著。文藝春秋

1943年、北洋・アリューシャン列島。
アッツ島の玉砕をうけた日本軍はキスカ島からの全面撤退を敢行、無人の島には4頭の軍用犬
「北」「正勇」「勝」「エクスプロージョン」が残された。
自分たちは捨てられたーーその事実を理解するイヌたち。その後島には米軍が上陸、自爆した
「勝」以外の3頭は保護される。やがて3頭が島を離れる日がきてーーそれは大いなる
「イヌによる現代史」の始まりだった!(あらすじ引用)


ああ、読みたかったのよこの作家さん、ずっと。
と言っても全然前知識がなかったので、読み始めた途端びっくりの連続。本書独特のものか
この人の定番スタイルなのかわからないけれど、扱っている題材ももちろんの事、
この語り口。「神の視点」?これ語ってるの誰?^^;
わたくし、これは「二人称」だと思うのだけど。。。
そして時々イヌの一人称になったりヤクザの娘の一人称になったり。(これがやたら面白い)

20世紀の年代史でありながら、視点はあくまでイヌ。
麻薬探知犬となったり、ドッグ・ショウ犬として引き取られたり、戦争で戦ったり、
橇犬として活躍したり。
やれ血統がどうの、籍がどうのと騒ぐ人間達の愚かさと、巻き込まれてそれでも
人間に従順足らんとするイヌ達の哀しさ。最後はイヌの名前をもらって生きる事になった
ヤクザの娘が(これまた口が悪くて生意気な子なのよ)同じく戦争や抗争の犠牲者のようで
胸が痛くなってしまうのはやっぱり狙いなのか。

読み方はノンフィクションの雰囲気に近い。物語として読むには嘘と真実の繰り返しで
詰まってしまいやすいかも。ミステリーでもないし。
物語の始まりは第二次世界大戦中の日本領キスカ島に取り残された4頭の軍用犬。
そこから1980年~アメリカーソ連の冷戦期間~1991年あたりまでの年代記、かしら。
(間違ってたらご指摘あれ^^;)
堅いと言えば堅いかもしれないのと独特すぎるので(文体と世界観が)あんま
お薦めはしません。好きな人はめちゃくちゃ好きそう、とだけ。