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ガラスの殺意  (ねこ3.7匹)

秋吉理香子著。双葉社

「憎きあいつを殺したのは……私!?」二十年前に起きた通り魔事件の犯人が刺殺された。 警察に「殺した」と通報したのは、同じ事件で愛する両親を失った女性。 だが、彼女はその現場から逃げる途中で交通事故に遭い、脳に障害を負っていた。 警察の調べに対し、女性による殺害の記憶は定かでない。 復讐は成し遂げられたのか、最後に待つ衝撃の真相とは? 驚愕の長編サスペンス・ミステリー!(紹介文引用)
 
秋吉さんの長編サスペンス。今作は記憶障害を抱える40代女性の身に起きた悲劇の物語で、なかなか面白かった。
 
主人公の麻由子は20年前の交通事故により脳機能に障害を負った。記憶が10分~程度しか保てなくなったのだ。麻由子の記憶は常に高校生の時代に戻り、20年前に通り魔に殺された両親のことも、自分が41歳で事故の加害者(光治)と結婚したこともすぐに忘れてしまう。その通り魔を刺殺して自分で通報したことも。
 
麻由子が病気のために何度も何度も同じ質問をしたり進んだ話の展開を忘れてしまうのでちょっとじれったかった。本当に麻由子は通り魔を殺したのか?という謎から、夫の光治はなぜ麻由子の無実を信じないのか?など、次々と分からないことが出てくる。
 
あと、刑事の優香が語り手となっている章が多いので、実質的主人公はこっちかも?優香は母親が若年性認知症で施設に入っており、兄弟は全く協力的ではない、という「介護問題」を抱えて悩んでいる。特に兄の「介護こそ女の出番」とか「子育てと思えばいい」とか、現実を何も知らないゆえの発言は許しがたい。自分は「手伝いに来た」と言いながら洗濯も洗い物も荷物の片付けも何もやらずとんちんかんな上から目線アドバイス。。こんな兄とは縁を切ってしまえと言いたくなる。何も言わない優香にもちょっとイラっとしたり。何も悪くないんだけどね、あまりにも不甲斐ないから。。いい加減、「施設なんてダメだ、介護は身内がやるべき(と、言いながら嫁にやらせるも含む)」はやめるべきだと思うけどね。
 
おっと関係ないグチが出た。
色々とどんでん返しもあり、緊迫したシーンもありまあまあ良かったかな。サクっと読めるのもいい感じ。(しかし、現実に加害者と被害者が結婚、交際したケースってあるんだろうかとどうでもいいことも気になったり)