すべてが猫になる

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アリアドネの声  (ねこ4.4匹)

井上真偽著。幻冬舎

救えるはずの事故で兄を亡くした青年・ハルオは、贖罪の気持ちから救助災害ドローンを製作するベンチャー企業に就職する。業務の一環で訪れた、障がい者支援都市「WANOKUNI」で、巨大地震に遭遇。ほとんどの人間が避難する中、一人の女性が地下の危険地帯に取り残されてしまう。それは「見えない、聞こえない、話せない」という三つの障がいを抱え、街のアイドル(象徴)して活動する中川博美だった――。 崩落と浸水で救助隊の侵入は不可能。およそ6時間後には安全地帯への経路も断たれてしまう。ハルオは一台のドローンを使って、目も耳も利かない中川をシェルターへ誘導するという前代未聞のミッションに挑む。(紹介文引用)
 
去年話題になっていた井上さんの最新作をようやっと読了。
 
巨大地震が発生し、地下都市に取り残された女性をドローンを使って救出するお話。その女性は目が見えず耳が聞こえず口がきけない三重障害を持っており、救助は困難を極めた。ネズミの大量発生、漏電、自動運転シャベルカーなど次々と立ちふさがる壁、ハルオら救助チームは彼女を救えるか。しかも同時期に失声症の女児が行方不明となり――。
 
よくここまでありとあらゆる困難が考えつくなと思う。映像化したらさぞ迫力だろう。初めは地下施設の説明やドローンの特性などの説明箇所がかなりの文量を占めるのでちょっととっつくにくかった。しかも、登場人物が全員性格が歪んでいたり熱血でウザかったりする。なんのため?と疑問に思う。要救護者の女性や通訳の女性ですら、詐称疑惑が生まれなんだか胡散臭く見えたりするのだ。
 
だが、それもすべて最後の真実を知るまで。多分、イライラしながら読んでいた人ほど感銘を受けると思う。もしかしたら自分はなんて心が歪んでいるんだと恥ずかしくなってしまうかもしれない。私のことだけど。まあとにかく最後のシーンだけで全て覆っちゃうぐらい、衝撃の結末だった。