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ぬるくゆるやかに流れる黒い川  (ねこ3匹)

櫛木理宇著。双葉社

六年前、ともに家族を無差別殺人でなくした同級生の小雪が香那の前に突然姿を見せた。 犯人・武内譲が拘置所で自殺したため、犯行動機等が不明なままの事件を 改めて調べようと誘ってきたのだ。香那たちは事件を追うごとに 世代を越えて女性嫌悪にとりつかれた男性達の存在に気づかされる。 武内譲が憎んでいたものはなんだったのか。それを知ったとき二人は……。(紹介文引用)
 
少し前に読んだ「死刑にいたる病」が良かったので、内容もろくに調べず適当に選んでこの本を読んでみたが。。
 
いやあ、キツかった。キツすぎた。今まで読んできた3000、4000冊もの本の中でも1番メンタルえぐられる感じがした。これは読んでいても気分が悪くなるだけなので挫折しようかと何度か思ったが。。まあ読みやすいからそんなに日数はかからないだろうというだけの理由で読み切った。
 
二家族を無差別に襲い死刑囚となった男・武内譲は拘置所で自殺した。やがて被害者遺族である香那と小雪は出会い、なぜ自分の家族が殺されなければならなかったのか、武内とはどういう男なのかを調べ始める。その過程で武内譲は女性蔑視のミソジニストで、SNSで女性全般に対しかなり過激な発言を繰り返していた。彼がそこまで女性全体を嫌悪し憎悪するようになったのはなぜなのか――。
 
武内の育った環境がろくなものではなかったことは容易に想像がつく。そして「こんな環境、親に育てられては彼のような悪魔が育っても不思議ではない、だがそれでも真面目に生きている人はたくさんいて、彼の生育環境は犯罪行為とは関係がない――」というありきたりの終着地へ持って行かれるのかな、と思っていたが、、、話がなんだか大幅にズレてゆき、彼の祖父や曽祖父がいかに暴君で女性差別の塊のような人物だったか、明治時代のある女性の悲惨な生涯や社会問題を掘り下げることに舵を切ってしまう。もう香那や小雪の存在はどこへやら。いや、ここまで醜悪で異常な男たちばかり出てこられても、、時代関係なくもう精神異常のレベルでしょ。武内だってそう。こういう人間に善悪や動機を問うても、、
 
結局新たに発生した殺人事件の犯人は唐突すぎるし、香那や小雪が彼らや被害者の女性たちに対してもっとどう感じたのかや、唾棄すべき種類の存在に対し、それを踏まえこれからどう生きていくのか、そういうところに踏み込んで欲しかった、これこれこういう女性たちがいて悲惨でしたということと、こういう男性たちが一定数いる現実だけを読まされてまさに「ぬるくゆるやかに流れる黒い川」だけが残った。勉強になる部分ももちろんあるが、他はミソジニーだのなんだの、わざわざ見なくてもいいところに自分から手を出してしまったかなあ。ちょっと櫛木さん、リタイアです。。