すべてが猫になる

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秋雨物語  (ねこ3.5匹)

貴志祐介著。角川書店

失踪した作家・青山黎明が遺した原稿。それは彼を長年悩ませる謎の転移現象の記録だった。転移に抵抗する青山だったが、更なる悪夢に引きずり込まれていく(「フーグ」)。ある呪いを背負った青年の生き地獄、この世のものとは思えないある絶唱の記録など、至高のホラー4編による絶望の連作集。『黒い家』『天使の囀り』『悪の教典』……いくつもの傑作を生み出した鬼才・貴志祐介が10年以上にわたり描き続けた新シリーズが遂にベールを脱ぐ。(紹介文引用)
 
貴志さんのホラー短編集シリーズ第1弾。
雨月物語上田秋成)」をモチーフにして描かれた作品集とのことだが、未読のため関連は理解できず残念。しかし物語はオリジナルだと思うのでこれだけでも楽しめる、、はず。
 
「餓鬼の田」
社員旅行の宴会から外れ、たまたま話すことになった美晴と人気社員青田。青田はもてるのになぜか付き合った女性はことごとく自分から離れていくのだという。
なんとなく昭和ノリの雰囲気。軽いお話なのだが、前世の呪いだの動物虐待だの、内容は不穏。オチでカクっとなった、リアルな女性心理。
 
「フーグ」
編集者の松浪が、作家の青山黎明の作品らしきものを読むとなにやらそれは青山自身のテレポーテーション体験記のようで。。
「暗い過去」というと動物虐待が外せないのだろうか?前作が占い師、今作が霊能者絡み。なかなか壮大で恐ろしい体験、取り憑かれたらもう逃げられないのだろうか。
 
作家の大西が、音楽愛好者の嵯峨の自宅で聞かされたある天才女性歌手2人の壮絶な生涯。話がだんだん大きくなっていく。。彼女たちが迎えた恐ろしい運命もなかなかゾクっとするものだったが、なんとしてもその歌手、レコードについて知らずにいられない愛好家の執念みたいなもののほうが怖いなと思った。ちょっと話が専門的すぎてついていけなかったが、全然興味のない分野でもないのでなんとか。
 
重くつらい環境に身を置く少年少女が、1人を犠牲にして残りの人間の人生がお告げによって切り開かれていくという変わったこっくりさんを体験する。やがて祈りはその通りになり、年月は流れ――。
信じていたルールが現実は違うものだったという恐怖と、人間そのものの業のようなものを見せつけられてなかなか読み応えがあった。
 
以上。
ホラーはホラーなのだが、ゾクっとする恐怖体験ストーリーみたいな感じかな。う~ん、普通に読めるがこれといって刺さるお話はなかった。貴志さんにもう初期の勢いはないか。