すべてが猫になる

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希望の糸  (ねこ3.8匹)

東野圭吾著。講談社文庫。

小さな喫茶店を営む女性が殺された。 加賀と松宮が捜査しても被害者に関する手がかりは善人というだけ。 彼女の不可解な行動を調べると、ある少女の存在が浮上する。 一方、金沢で一人の男性が息を引き取ろうとしていた。 彼の遺言書には意外な人物の名前があった。 彼女や彼が追い求めた希望とは何だったのか。(裏表紙引用)
 
加賀恭一郎シリーズ、わーい!と喜び勇んで読み始めたものの、実質的な主人公は加賀さんの従兄弟・松宮だった。まあいいんだけど。ちょこちょこ加賀さんも出てくるしね。まあ気を取り直して。
 
松宮が捜査するのは、カフェ店主殺害事件。しかし店主の弥生は誰に聞いても「いい人」という評価しか返ってこないような人格者だった。金銭目的でもなく、交際していた男もいない。一体誰がどういう動機で殺したのか?
一方、カフェ常連の汐見と弥生との関係性に目をつけた松宮。汐見には震災で2人の子どもを亡くし、さらに数年前妻を白血病で失うという過去があった。体外受精により授かった娘と現在は2人暮らし。何やら事件に関連がありそうだが。。
弥生の元夫・綿貫も意味ありげに登場する。子どもを授かれなかったという理由で弥生とは離婚し、現在は内縁の妻とマンションで暮らしている。事件の直前に弥生に呼び出されていたようだ。
そして松宮自身にも自分の生い立ちに関する試練が立ちはだかる。死んだと聞かされていた父親が生きていて、末期ガンで余命いくばくもない状態だというのだ。父親は松宮を認知したいと書き残しており、戸惑う松宮。母親に事情を聞いてものらりくらりと躱すばかりで。。
 
↑と、人間関係が複雑なのでほぼ自分のために書いた登場人物紹介。事件の犯人は早々に判明するが、その動機が明かされるのは終盤。すべての謎を紐解いて、多くの人々が翻弄された絡まった運命の糸がほぐれてからようやく松宮の物語が意味を帯びてくる。血縁関係なく親の愛って凄いなあとも思うし、クリニックの医師たちを信じられないとも思うし、松宮のところも加賀さんに負けじと劣らない家庭事情があったんだなと驚いた。まあ、母親同士の秘密については「またコレか」と思わなくもないし(最近、どの映画でもこの要素入れないとクレームでも来るの?と思うぐらい多い)、綿貫の「子どもができなかったから離婚→子どもができたら結婚」という生き方が気に入らなかった。最後の父娘の心を通わせ合うシーンがあってトントンといったところだが。ちょこちょこ心理的に?なところもありつつ、やっぱり加賀さん主人公じゃないと少し落ちるな。いや面白かったけども。面白かったというのが大前提だけども。