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マーダー・ミステリ・ブッククラブ/The Murder Mystery Book Club  (ねこ3.8匹)

C・A・ラーマー著。高橋恭美子訳。創元推理文庫

ミステリ好き、クリスティ好きなアリシアとリネットの姉妹が出した読書会メンバー募集の告知に応えてきたのは、古着ショップのオーナー、医師、主婦、図書館司書に博物館勤務員といった面々。ところが二回目の読書会で早くもトラブルが。主婦のバーバラがあらわれなかったのだ。家にも帰っておらず、事件に巻き込まれた可能性も。アリシアは読書会のメンバーの協力のもと捜し始めるが……。マーダー・ブッククラブ・シリーズ開幕。(裏表紙引用)
 
うん、気に入った。本書は元々「アガサ・クリスティ・ブッククラブ」というタイトルで出版されたらしい。が、混乱を避けるために変更したとのこと。そりゃそうだ。というわけなので、クリスティファン(特にポアロ)にはよだれもののミステリ・シリーズとなりそう。捜査方法や事件のヒント、名台詞の引用などのすべてがクリスティ作品をオマージュしており、作品のみならずクリスティ自身の生き様さえも踏襲している。とにかく全編クリスティ色に染まった作品なのだ。(でも作者はイギリスじゃなくてオーストラリアの人なんだよね。背表紙がイエローだから勝手に勘違いしてた)
 
ヒロインはミステリー好きの出版社勤務アリシア。プロ級の料理人リネットも趣味を同じくしており一緒に活動するので、ほぼダブルヒロイン。純文学の読書会に間違って参加してしまい高尚な会話が肌に合わず(笑)、それなら自分でミステリーの読書会を作っちゃおうと新聞広告に募集要項を掲載。かくして集まったのはクリスティマニアで個性的な面々。開催2回目にして「なんか不幸そうな主婦」バーバラが行方不明になるわおしゃべりな図書館員ミッシーが轢き逃げされるわ、メンバーに不可解な災厄が。。
 
危険な状況に一人で乗り込んでいくとか、容疑者を次々怒らせるなど綱渡り状態が多いのでハラハラする。アリシアの正義感の強さは好感が持てるものの、真っ直ぐすぎて目が離せない感じ。メンバーで言うと古着屋店員クレアの「4年も婚約状態」にモヤモヤした。明るい博物館員ペリーはゲイなんだな、とすぐ分かるので賑やかしのポジションかな。独身医師アンダースとアリシアは結ばれる気がしない、、と本を読みなれている読者ならすぐピンときそう。うーん、気の毒だけど嘘は嘘だからね。「独身」って言う必要あった?バーバラの娘ホリーは確かにかわいそうだけど、あんな口の利き方する子ども私なら擁護したいと思わないなー。それに、「暴力ふるってない」からそこまで悪い夫じゃない、みたいなアリシアの言い分も納得いかないなあ。世の中にはそれよりタチの悪いモラハラというものがあってだね。まあ、それ以上にバーバラもどうかと思うけど。
 
でもまあ事件はちゃんと推理による解決だったし(クリスティの足元にも及ばんが、コージーミステリーだからアリかな)、人間ドラマやロマンスも生き生き描かれているし、なによりキャラクターは全員立っていて楽しいシリーズだな。続編もおねがいしたい(邦訳を)。