すべてが猫になる

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マジカルグランマ  (ねこ3.7匹)

柚木麻子著。朝日文庫

正子は75歳の元女優。CMで再デビューを果たし、順風満帆かと思いきや、ある出来事で事務所を解雇され、急きょ、お金が必要な状況に。周りを巻き込み逆境を跳ね返す生き方はマジカルグランマ(理想のおばあちゃん)像をぶち壊す! 第161回直木賞候補作。(裏表紙引用)
 
柚木さんの文庫新刊。
 
タイトルの意味もわからず、おばあちゃんがヒロインの柚木作品って人と視点が違って面白いだろうなあと期待していた。まあ、面白かったのだが、、想像していた「痛快で可愛いおばあちゃん像」とはかーなーりーーー違った。元女優というのも大きいのだが、とにかく頑固でワガママ、空気を読まない。せっかくうまくいきかけたのに余計な一言や余計な行動が邪魔をする。世間に嫌われまくって仕事も入ってこなくて一体どうするんだろうと思っていたが、やはりどこか魅力があるのか、近所の人や居候の杏奈、色々な人に助けられ盛り上げてもらってなんだかんだ楽しく生きてる。
 
最初は正子にも杏奈にもイライラし通しだったが、読んでいくうちに自分の中でなんとなく印象が変わった。周りからみてどんなにすごい男でも、自分にとってどうかなんて妻にしかわからない。死んでも悲しくない、とにかく遺品をお金にしたい。そう思うことは自由だと思う。それをテレビや他者に言わなきゃいいだけで。その分別があるかないかなんだな。家をお化け屋敷にする発想なんかはとても読んでいてワクワクしたし。杏奈も最初こそスマホばっか見て何も行動しない子だったけど、だんだん頭角をあらわしてきたりして。世の中の価値観はどんどん変わっていく。これを5,6年前に読んでいたら全く理解できなかったかもしれないが、今は楽しく自由に、型にはまらず誰でも自分らしく生きていい時代。ステレオタイプ(マジカルグランマ)のおばあちゃんじゃなくてもいいじゃない。