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放課後に死者は戻る  (ねこ3.9匹)

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秋吉理香子著。双葉文庫

ある夜、教室の机に入った手紙で呼び出された僕は、崖から突き落とされた。目覚めると、冴えないオタクだったはずが、巻き添えになった美形の男子高校生の姿に変わっていた―元いたクラスに転校生として潜入した僕は、入れ替わった姿で犯人捜しをはじめる。いったい誰が僕を殺したのか?そんな僕に警告を発するのは何者か?初なさと驚きに満ちたラストが待つ傑作青春ミステリー!(裏表紙引用)
 
「暗黒女子」と対になっているような表紙だが、全く内容は関係ない。共通点は学園ミステリーだということぐらいか。こちらは男子のスクールカースト、生まれ変わり、犯人探しがテーマ。
 
冴えない鉄道オタクの小山のぶおが何者かに呼び出され、崖から突き落とされた挙句目が覚めたら超絶イケメン高橋真治と入れ替わっていた、という設定。容姿が違うというだけでこれだけ周りの扱いが違うのか、という小山のぶおの気づきに注目した。だけど実際は見た目ではなく、目つきや歩き方、性格に問題があった。感じ悪い、と思っていたイケてる男子生徒や地味な女子も、実際話してみるととても魅力的でいいやつだったという展開も面白い。親友、母親、すべての人びとを疑える犯人探しミステリーとしてもなかなか意外性があって楽しめたが、小山のぶおの再生物語としての要素のほうが強い。割と綺麗事として爽やかに感動的に終わるあたり賛否が分かれそうだが(これは男子だからかなあという思いが頭をよぎった)、自分は素直にいい話として受け止めた。黒さも抑え目だし、秋吉さんの読んだ作品の中ではこれが1番好きかなあ。