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猫のお告げは樹の下で  (ねこ4匹)

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青山美智子著。宝島社文庫

ふと立ち寄った神社で出会った、お尻に星のマークがついた猫―ミクジの葉っぱの「お告げ」が導く、7つのやさしい物語。失恋した相手を忘れたい美容師、中学生の娘と仲良くなりたい父親、なりたいものが分からない就活生、夢を諦めるべきか迷う主婦…。なんでもない言葉が「お告げ」だと気づいたとき、思い悩む人たちの世界はガラッと変わっていく―。あなたの心もあたたかくなる連作短編集。(裏表紙引用)
 
青山さん3冊目。
「お探し物は図書室まで」「木曜日にはココアを」を読んでお気に入りになった作家さんなんだけども、3冊目を読んで本格的にファンになったかも。1番良かった。
 
小さな神社に住む(?)ハチワレ猫の「ミクジ」からタラヨウの葉に書かれたメッセージを受け取ると、それぞれの人生で迷っていたものやくすぶっていたものがみるみるイイ感じになっていくというファンタジードラマ。それはとても身近なもので、決して選ばれた人間や特別才能や運がある人びとの悩みではない。だけど自分は凡人だとラベリングしているのは自分自身。ミクジのメッセージを運良く受け取ったからとんとん拍子に幸せになるのではなくて、それぞれがそれなりの障害や試練を自分で乗り越えていくのがいい。思い込みというのはとても根深いもので、「あの人はこう思っているのだろう」という他人への決めつけがどれほど見当違いのものかは私自身も身を持って経験しているから分かる。いい意味でも悪い意味でも。みんな、会話が圧倒的に足りないんだよね。特に就活中の青年がギターで変わった「ポイント」、プラモデルに夢中になりすぎて離婚された男の悲哀と喜びを描いた「タネマキ」、転校先でイジメに遭っている少年と教師たちとの交流が温かい「マンナカ」が好み。
 
ミクジもクールなのか甘えたなのかよくわからんところがなんとも可愛かったし、指南役である宮司さんも肉まんが冷めるのを気にしたり実は神職と中華料理屋を掛け持ちしてたりとキャラが立ってる。そして「お探し物は~」の小町さんが登場。すぐわかった。。やっぱり一貫してるなあ、話し方とか性格も。
 
このミクジもの、シリーズ化してくれないかなあ。ライトなお花畑小説に見えて内容はなかなか人生の真理を突いているよ。