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諦めない女  (ねこ3.8匹)

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桂望実著。光文社文庫

母親がスーパーで買い物をするわずかの間に、六歳の少女が忽然と姿を消した! 十二年後、フリーライターの飯塚桃子は、事件についての本を書き上げるため、当事者や関係者たちへの取材を重ねていく。 それぞれの人物の言葉から浮き上がってくる驚くべき真実、そして少女と母親を待ち受ける運命とは? 一章ごとにがらりと変貌を遂げてゆく極限のミステリー!(裏表紙引用)
 
初・桂望実さん。
べるさんのところで何年も前から気になっていた作家さんに挑戦。本当は「県庁の星」とか「嫌な女」とかを読みたかったのだけど、見当たらなかったのでとりあえず目についたこちらを。どれも面白いと聞いていたし。
 
で、内容。
ライターの飯塚桃子が12年前に起きた少女失踪事件について関係者にインタビューしていくという体裁。6歳で忽然と姿を消した沙恵の母親・京子は何年経っても娘の生存を信じ、1人ビラを撒くなどの活動を続けていた。やがてそれは狂気に変わってゆく…。
 
後半ほとんど一気読みした。沙恵らが陥った境遇に驚いたし、さらわれた子どもたちの異常な生活にも心を持って行かれ、一体京子や沙恵はこれからどうなるのかと読む手が止まらない。京子の言動や行動はほとんど異常だけれど、最愛の娘を奪われたのだから同情の余地は充分にあるかな。イライラするけども。これまた娘を諦め若い女と再婚し子どもをもうけた夫も酷い人間のように描かれているけれども、これまたしょうがないのかな、と思ったりする。悪いのは圧倒的に犯人であって、どちらも運命に抗おうとする不幸な人びとの話であることに変わりはない。京子の義母や姉は虫が好かなかったし、ライターの飯塚に関してはもう少し違う人物像にできなかったのかな、と思わなくもないが。ちょっと起きた事件に対して軽薄というか、性格の歪みを節々に感じる。彼女も毒親を持ち人格形成に色々影響はあったようで気の毒ではあるが、それならそこのところをもっと掘り下げても良かったような。彼女に対しての印象が悪いまま終わってしまった。まあ桂さんの作風をまだ知らないのでなんとも。タイトルの「諦めない女」が誰にかかっているのか、が分かるラストは良かった。最初からずっと昭和っぽい古いタイトルだなあと思っていたので腑に落ちた感じ。帯に「三度驚く!」と煽ってあったのだが、一度目は子どもたちの行方、二度目はプロローグの京子の境遇の種明かし、あと一つはなんだろう?
 
うん、面白かった。読みやすいし過度な不快感もないし好きかも。原田ひ香さんと合わせてどんどん読んでいこうかな。