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虚談  (ねこ3.8匹)

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京極夏彦著。角川文庫。

元デザイナーで小説家の「僕」は、知人友人からよく相談を受ける。 「ナッちゃんはそういうの駄目な口やろ」と笑いながら、デザイン学校時代の齢上の同輩、御木さんは奇妙な話を始めた。 13歳のとき山崩れで死んだ妹が、齢老い、中学の制服を着て、仕事先と自宅に現れたというのだ。 だが彼の話は、僕の記憶と食い違っていた……(「クラス」)。 家に潜む【誰か】。祀られたキンゴロー様。夢の中の殺人――。 この現実と価値観を揺るがす連作集。(裏表紙引用)
 
京極さんの「~談」シリーズ。第6弾かな。
10編収録の怪談とも怪談でないとも言えない不思議なコワイお話ばかりを集めていて統一感がある。
 
「レシピ」
高校の同級生が当時付き合っていた彼女が今でも家の台所に現れるお話。耳元でレシピを囁いてくる幽霊、、いたら怖いけど笑える気も。
 
「ちくら」
紙問屋の大木の向かいの鉄工所のお爺さんに愛人ができたようだ。しかし、お爺さん以外の人間にしか見えていないようで…。
 
「ベンチ」
小学生時代、親戚かどうか分からない「おじさん」という存在がいた。おじさんは宗教にハマっていて…。仏壇や位牌を庭に投げて壊すシーンに引いた。
 
「クラス」
デザイン会社同僚の御木さんの妹が幽霊になって出てくるらしい。人間が入り組んでいてこんがらがる。
 
「キイロ」
中学男子グループがキンゴロー様と名づけ酒瓶を祀る遊び。主人公はその酒瓶にちょっとしたイタズラをしたが、それ以来黄色い男と赤ちゃんが出没する噂が。。
 
「シノビ」
劇団女優の寒川さんの住む家の天井には忍者が出るらしい。前の住人について調べると意外な事実が。。
 
「ムエン」
作家の自宅に本名宛で届いた見知らぬ男からの手紙。作家はどんな縁があるのかと男に会ってみたが…。これが本当だとしたら心の闇は深い。
 
「ハウス」
ミステリ作家の主人公に聞かせた、ライター木村さんの知人の話。介護をしていた父親が亡くなったが、ある日その父親が家に帰って来たというのだが。。どんでん返しがあり、ミステリ風味。
 
「リアル」
作家が発熱した時に見る不思議な夢。そこには知らない家が出てきて、どうやら自分は殺人を犯したらしい。
 
「コード」
中学時代に住んでいた祖父母の家で体験したちょっと不思議な話。自室の電気のコードの順番が毎日入れ替わってしまう。
 
 
以上。
どのお話も、最後に「これは嘘だ」「嘘かも」という人を喰った文章で締められていて、本当に嘘なのか、どれが嘘なのか、と話によって翻弄させられるのが特徴。さすが「虚談」というだけある。怪談とまではいかないが…というスタンスなのかな。不思議さが際立っていてほどほどに怖く、なかなか楽しめた。