すべてが猫になる

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ダンデライオン  (ねこ3.6匹)

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中田永一著。小学館文庫。

それは、仕掛けられた出会いだったのか。 11歳の下野蓮司はある日、病院で目覚めると大人の姿になっていた。 20年の歳月が流れ、そこに恋人と名乗る西園小春が姿を現す。「子ども時代と大人時代の一日が交換されたの 」 一方、31歳の蓮司は11歳の自分の体に送り込まれ、ある目的のために、20年前の世界で小春の家へと急いでいた――。(紹介文引用)
 
7年ぶりだという中田永一名義作品の文庫化。この名義では割と心温まる作品を描いている印象。
 
この本を読む前に読んだ伊坂幸太郎作品が瞬間移動モノだったので、「ま、また移動モノか。。」とテンション下がったことが作品自体をそれほど楽しめなかった理由の一つであるかも。。入れ替わりモノとかテレポートものって好きじゃないので。。あと、文体がジュブナイル?というぐらい平易で、伊坂さんのあとにコレはキツイなと思ってしまった。乙さんって決して文章の下手な作家さんではないのだが。。アレ?って感じ。
いや、この作品が下手だったみたいな言い方だがそういうわけでもないのよ。
 
ごちゃごちゃうるさいな。
 
さて、11歳の野球少年が32歳になった大人の自分と入れ替わって、殺人事件や交通事故などの自分の将来の婚約者の身に起きたことを改変しちゃうお話。確かに、将来自分と結婚するっていう女性が現れたら抵抗したくなるかも。その人がイヤなわけじゃなく、自分で選びたいよね。いや、自分で選んでるんだけどそれは未来の自分なわけで。それでも行動を起こす蓮司は偉いなと思った。最初、なんで殴られたりモノを落として壊すって分かっていてそのまま受け入れてるんだろう?と思っていたけど、ちゃんと理由があったっていう。しかも、殺人事件の犯人が捕まっていないことからさらに謎を解こうという。時間軸を移動しながら、色々な人物や出来事が最後に繋がって劇的な展開を迎えるっていうのが良かった。こういうとこやっぱりうまいな。最後に蓮司が下した決断も、気持ちのいいものだったし。なかなかの良作かな。