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彼と彼女の衝撃の瞬間/His & Hers  (ねこ4匹)

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アリス・フィーニー著。越智睦訳。創元推理文庫

ロンドンから車で二時間ほどの町の林で、女性の死体が発見された。爪にマニキュアで謎の言葉を記されて……。故郷で起きた事件の取材に向かったのは、ニュースキャスター職を外されたばかりのアンと事件を捜査する刑事ジャック、ふたりの視点で語られていく不気味な殺人事件。だが、両者の言い分は不可解に食い違って……。どちらかが、とてつもない嘘をついているのか? 予想外の展開とどんでん返しが待ち受ける、第一級のサスペンス!(裏表紙引用)
 
ちょっと目を引く邦題だったので読んでみた。初めての作家さんだったけど、うん、面白かった!
 
現場を外され自分の存在意義に焦りを感じ始めたアン、<彼女>の視点と、今回起きた殺人遺棄事件を担当する刑事、アンの元夫ジャック、<彼>の視点が交互に描かれ事件が進行していく構成。さらに合間に犯人の独白が挿入されており、これがまたうまいことに誰にでも当てはまるような描き方をされているので読者としてはまんまと翻弄される感じ。
 
ちょっとミステリーを読みなれた者なら、<衝撃>とは大袈裟な、、と思わなくもないかも。そこまで真相だけを煽らなくても、アンとジャックの関係であったり、元アンの不倫相手の妻の正体であったり、アンの学生時代のいじめ事件の陰惨さであったりと物語の部分は充分面白く引き付けるのだから、、この邦題は逆効果かな?まあ、原題のままで売れたとは到底思えないからいいのか。そういう感じなので、衝撃そのものを期待するのでなく面白いサスペンス、読み物として向き合うぐらいでちょうどいいかも。登場人物紹介がない(最初、何度も探した)ほど登場人物が少ないので、読みやすいし。内容もハードとソフトの中間くらいなので万人向け。