すべてが猫になる

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N  (ねこ3.8匹)

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道尾秀介著。集英社

全六章。読む順番で、世界が変わる。 あなた自身がつくる720通りの物語。 すべての始まりは何だったのか。 結末はいったいどこにあるのか。 「魔法の鼻を持つ犬」とともに教え子の秘密を探る理科教師。 「死んでくれない?」鳥がしゃべった言葉の謎を解く高校生。 定年を迎えた英語教師だけが知る、少女を殺害した真犯人。 殺した恋人の遺体を消し去ってくれた、正体不明の侵入者。 ターミナルケアを通じて、生まれて初めて奇跡を見た看護師。 殺人事件の真実を掴むべく、ペット探偵を尾行する女性刑事。 道尾秀介が「一冊の本」の概念を変える。(紹介文引用)
 
ミッチー新刊。読む順番は720通り。6編の短編の冒頭が最初に1ページずつ掲載されており、読みたいと思った順に読んで下さい、という画期的な小説。しかも、1編ずつ上下が逆に印刷されている。もしかしたら、掲載順に読んじゃう人が1番多いんじゃないかな~、それじゃつまんないし、と作者の指示通りそれぞれ1ページずつ読んで、読みたいと思った作品順に手をつけた。たまたま従来の印刷通りの向きのものばかりを最初の3編に選んだので、上下をぐるぐる変えるような面倒なことはしなくて済んだかな。後半3編は読みたい順というよりパラパラして読んでないな、というタイトルを見つけては読んだ。
 
読んだ順に紹介。
「落ちない魔球と鳥」
野球部に所属する双子の兄弟の弟のほうが、漁港で見つけたヨウムを飼い主のところへ届けるお話。
 
「眠らない刑事と犬」
女刑事の小野田が、夫婦殺人事件を単独で捜査するお話。
 
「飛べない雄蜂の嘘」
大学研究員の女性が、同棲していたDV男を刺してしまうお話。
 
「名のない毒液と花」
中学理科教師が、母親が事故死してしまった生徒の謎に向き合うお話。
 
「消えない硝子の星」
舞台アイルランド終末医療を受ける女性と娘。女性に指名された日本人看護師のお話。
 
「笑わない少女の死」
またアイルランドが舞台。英語を話せない元英語教師がアイルランドで出会ったホームレスのふりをした少女との交流を描いたお話。
 
 
どのお話を読んでも次のお話で前のお話に出てきた登場人物が語り手を変えて出てくるので、前のお話で死んでしまっていたり事件に巻き込まれていたり大切な人を失くしていたりということが読む順番によっては最初に分かってしまう。順番が違えばそれを知らないわけで、読者によって世界が変わるというのはこういうことか、ということは理解した。スター・ウォーズみたいなものかな。Ⅰから観た人とⅣから観た人とでは驚くシーンが違うっていう。どのお話も前のお話の続きのように読めてしまうのでそこはビックリ。結構凄いことをしているんだと思う。
 
率直な感想を言うならば、もっと他に何か仕掛けがあるのかなと期待していたので肩すかしなところも無きにしも非ず。あと、個人的な好き嫌いの問題だけれど、最初に読んだお話が1番面白く、最後に読んだお話がなんだか悲しかったので「失敗したかな(順番)」と思ってしまった。ミステリー的などんでん返しがあるものや感動的な結末のものを最初にガーっと読んでしまい、そのためか後半に選んだものは(色々もう分かっちゃってるので)インパクトが薄れてしまった。
 
うーん、どうなんだろう?もちろん面白かったのだけれど。ほんとにこれ、順番によって評価が変わるかも。好き嫌いの問題だけではなく。再読することがあれば、絶対この順番では読みたくないな。