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メルカトル悪人狩り  (ねこ4.2匹)

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麻耶雄嵩著。講談社ノベルス

悪徳銘探偵メルカトル鮎に持ち込まれた「命を狙われているかもしれない」という有名作家からの調査依頼。“殺人へのカウントダウン”を匂わせるように毎日届く謎のトランプが意味するものとは? 助手の作家、美袋三条との推理が冴えわたる「メルカトル・ナイト」をはじめ、不可解な殺人事件を独自の論理で切り崩す「メルカトル式捜査法」など、驚愕の結末が待ち受ける傑作短篇集!(裏表紙引用)
 
おーいぇーー!メルカトル鮎シリーズに新刊が出たぞ!(と言っても雑誌の連載作品などを集めたもの)もうこのシリーズは出ないと思っていたので嬉しすぎる。。なんだかんだ、最初に好きになったキッカケのものがいつまでも好きなのである。1日で読んじまったい。
 
8編収録の短編集なのでとりあえずサクっと内容を。
 
「愛護精神」
美袋の住むアパートの大家の飼い犬が死に、庭に埋められた。そして大家の奥さんは自分が継子に命を狙われているらしい。この犯行はさすがに無理があるし捕まったんだかよく分からない幕引きもどうかと思うが、麻耶さんらしいシュールさ。メルって動物愛護団体の会員だったんだ。。メルがそんな殊勝なわけがないと信じて疑わない美袋がちょっと笑える。
 
「水曜日と金曜日が嫌い」
たぶん、アンソロジーで既読だが再読した。全く覚えていないので。
道に迷い高明な脳外科医の住む洋館にたどり着いた美袋。その日は博士に引き取られ独立した孤児が4人、博士の命日に備え集まっていた。風の小部屋に残された血痕と短刀、そして温泉で殺された孤児の1人、そして美袋が目撃した博士とおぼしき錬金術師の正体とは。
ちょっと詰め込みすぎてる感あるな~と思っていたら、突拍子もない真犯人の正体で全て吹っ飛んだ。。背景も全部ほったらかしなのがさすが麻耶作品。すごい幕の引き方するし。。
 
「不要不急」
わずか2ページの、コロナ禍のメルカトル&美袋の様子が描かれたもの。
「名探偵の自筆調書」
おなじく3ページ。書き下ろしかしら。なぜ屋敷で殺人が起きるのかをメルが語る。
 
「囁くもの」
依頼を受け鳥取にある商事会社社長の屋敷へやってきたメルカトルと美袋だが、社長秘書がクローゼットで首を吊られて死んでいるのを発見する。
結構強烈な動機だと思うのだが、サラっと流されてる。。。メルの行動の一つ一つがらしくなかったり不可解だったりするなあと思っていたら、メルはもう人間ではない領域に達してしまっているご様子。。
 
「メルカトル・ナイト」
もうタイトルだけでオチているような作品だな。
人気女流作家が命を狙われているらしい。毎日、赤い封筒に入れられたトランプのカードがまるでカウントダウンされるように届くというのだ。ホテルに避難した作家をメルが監視していたに関わらず、作家はベランダから転落死してしまうが…。
ハートのAではなくクラブのKが届いた理由、監視中なのに大酒を飲んだメル、そして暗黒すぎるオチ。
 
「天女五衰」
湖畔にある知人の別荘に招待されたメルと美袋。そこで美袋は天女の姿を見る。その後、劇団関係者ばかりが集まった天女荘で殺人が起きるが…。
最後、メルは美袋を守るためにそんなことを?それはそれで恐ろしい気がするが。。
 
「メルカトル式捜査法」
メルが過労で入院するという貴重な作品。復帰後も調子が悪くミスを連発する。まあしかしこのミスにも色々理由があって。。最初は仮病なのかと(退院後)疑ったが、本当に調子悪いのね。
 
以上。
大満足。過去作に比べメルの悪魔度は物足りない気もするが、性格の悪さは健在なのでやっぱり満足。しかも今回、メルの能力がパワーアップしている感が。。特に後半の3作は、メルが事件を世界を動かしているようなそんな雰囲気なんだもの。その点は、頭の中でごちゃごちゃ考える美袋がいないと成立しない設定なのがいいよね。だいたいどれも伏線もなんもなく、殺人事件が起きたらすぐメルが真相を解明するっていうパターンが麻耶さんらしく雑いので、メルが裏でどう思っているのかとかメルの何に気づいたかとか、ミステリーとして機能してるとすればソッチな気がする。だから真の探偵役は美袋かな。