すべてが猫になる

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いつかの岸辺に跳ねていく  (ねこ3.7匹)

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加納朋子著。幻冬舎文庫

俺の幼馴染・徹子は変わり者だ。道ばたで突然見知らぬ人に抱きついたり、俺が交通事故で入院した時、事故とは全く関係ないのに、なぜか枕元で泣いて謝ったり。合格間違いなしの志望校に落ちても、ケロッとしている。徹子は何かを隠してる。俺は彼女の秘密を探ろうとするが……。互いを思いやる二人の物語が重なった時、温かな真実が明らかになる。(裏表紙引用)
 
森野護が語り手となる<フラット>と、平石徹子が語り手となる<レリーフ>の二部構成。友だち以上恋人未満という感じの、幼馴染の2人。穏やかで優しい護と、地味だけど賢くてちょっと変わり者の徹子。護から見たヘンな徹子の言動が、徹子の側から語るとどういうことだったのかが明かされる<レリーフ>。これがなかなかに刺激的だった。徹子がある<秘密>の能力を持っていたことにより、護や徹子の周りの人びとの運命が変わっていく。そのおかげでヤンキーとお友だちになったりもする。基本ほのぼのと温かい雰囲気の物語なのだが、後半で登場する「カタリ」というサイコパス男の登場ですべて一変する。人の上に立ち、人を傷つけるのがとにかく快感だという異常者のカタリ。見た目も頭も良く、人当たりもいいものだから皆が騙されてしまう。徹子だけはその能力ゆえに騙されなかったが、これがまた新たな悲劇を生んでしまう。。
 
頼ってほしい男の子と何でも1人で背負ってしまう女の子の絆の物語という感じかな。最後の絶望からの大逆転はマンガみたいで笑ってしまった。加納作品だからそんなおかしなことにはならないと信じていたが…カタリのキャラがあまりにも不快すぎて感動しそこねてしまったかも。。徹子が助けたかったあの人物は結局死んでしまっているわけだし。。
 
評判もいいし凄く素敵な物語なのは頭で理解しているのだけど、気分に合わなくて辟易してしまった自分が残念。まあ、世間に合わせて同じ感想を書いても意味がないので正直に。実は先日読んだ「未来」でかなりメンタルやられてしまって、今度は心洗われる本を読もう、そうだ加納さんなら間違いないぞと選んだ本なので……。まさか加納作品でこんな思いをするとは思わず。。なになに?最近こういう信じられないぐらい不快なキャラが出てくる小説多い気がするんだけど。。ついに加納さんにまでその波が?加納さんと北村さんは私の最後の希望なんだけどなー。