「こんにちは、章子。私は20年後のあなた、30歳の章子です。あなたはきっと、これはだれかのイタズラではないかと思っているはず。だけど、これは本物の未来からの手紙なのです」 ある日突然、少女に届いた一通の手紙──。 家にも学校にも居場所のない、追い詰められた子どもたちに待つ未来とは!? デビュー作『告白』から10年、湊ワールドの集大成となる長編ミステリー、待望の文庫化!!（紹介文引用）
テーマが「子どもの貧困」なので内容はかなり重い。ページ数も多いので、これでもかと続く子どもへのDV、いじめ、性的虐待のオンパレードに気持ちが塞いでしまった。特に女子の使用済の汚物を教壇に晒すいじめのシーンは酷い。他にも、原因が片親家庭によるものなどの、自分ではどうしようもないものを攻撃するような、人として絶対にやってはいけない領域にまで踏み込んだものまである。これはさすがに湊さん、書きすぎではないか…と最初は反発心まで生まれた。が、しかし、作者が初めて書いたという「あとがき」にはこれは現実に起きていることであり、くまなく探せば出てくるレアケースを自分が目立つために書いたわけではない、と真摯に述べられている。今すぐ誰かに何ができるわけでもないが、この本を読んで少しでも１人でも誰かの心に杭を打ち込むことができればと願っているのだ。
最初は貧困児童である１０歳の「章子」が、２０年後の自分から届いた手紙への返事、という形で日記のように毎日の章子の生活が綴られる。最初は子どもらしいのんびりとした文章だったが、ある日を経て突然不穏な空気に包まれていく。。そのあとは章子の生活に登場した大人や友人亜里沙らが語り手となり、ああ手紙はそういうことだったのか、あの人の人生には裏でこういうことがあったのか、という事実が明らかになる。それも全て読んでいられないぐらい辛い内容で、希望が見えない。「未来」という、子どもには平等にあるべき輝かしいものに対して、章子や亜里沙のように本人の努力だけでは到底叶わない道を、かろうじてでも示してくれたのが良かった。この作品には悪魔のような子どもも数人登場するが、彼らもまた大人の犠牲者なのだと思う。変わるべきは子供を追い込んだ大人か、これから大人になる子どもたちなのか。
