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カナダ金貨の謎  (ねこ3.8匹)

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有栖川有栖著。講談社文庫。

殺害現場から消えた一枚のメイプルリーフ金貨が臨床犯罪学者・火村英生を真相に導く。 倒叙形式の表題作「カナダ金貨の謎」ほか、火村とアリスの出会いを描いた「あるトリックの蹉跌」、 思考実験【トロッコ問題】を下敷きにした「トロッコの行方」など趣向を凝らした五編を収録。 〈国名シリーズ〉第10弾。(裏表紙引用)
 
火村シリーズ自体は30作くらい出ているはずだが、国名シリーズという括りで縛るとまだ第10弾らしい。今回は5編を収録した短編集。
 
「船長が死んだ夜」
兵庫県は笠取町で起きたもと船長殺害事件をたまたま近くに来ていた火村&アリスが解き明かす。剥がされたポスターや防犯カメラを避けるためのブルーシートなどから犯人を絞り込んだ火村さん凄い。最後のアリスの推理って、もしこれが合っていたらやっと船長っていう設定が生きたことになるな、と。。
 
「エア・キャット」
飼っていないのに飼っている振りをすること、だそうな。意味がわからんが…。
アリスと朝井さんの歓談。京都で過去に起きた殺人事件を語るアリス。事件自体は何の変哲もないものだが、火村さんが自宅に落とした「三四郎」のメモ…火村さんはどうして事件を予言できたのか?
これすきーー。火村さんの猫好きがよくわかるし、タイトルとの意味付けもいい。
 
「カナダ金貨の謎」
倒叙ミステリ。先輩を殺害した太刀川だが、被害者と同居していた恋人が急遽旅行を切り上げて帰ってきたため考えていたトリックが破綻してしまう。金貨を持ち帰った太刀川、その理由に納得。まあ、書いてはあるけど、ここまでその人がキライなら殺すんじゃなく離れればいいじゃないか。。と、いう程度の動機。
 
「あるトリックの蹉跌」
火村さんとアリスが出会った記念すべきあの日の、アリスが描いていたミステリ小説の内容が明らかに。これは完全ファン向けの萌え作品。あっさり真相を見抜かれてガッカリしてるアリスだけど、ここまで興味を持つ時点で火村さんはアリスをかなり評価してると思う。
 
「トロッコの行方」
ロッコ問題ってあちこちでよく聞くんだけど、9割の人が犠牲者が少ない方に切り替えると答えるんだってね。私、何もしないけどな。。法的には裁かれなくても、気分的にはたとえ1人でも自分が手を下すのってイヤだなあ。。ほっとけば5人が犠牲になるけど、自分のせいではないしな。。って、これ必ずどっちかを選べって問題なんだろうけど。
それはさておき、内容。歩道橋から突き落とされた女性にはパトロンがいて、容疑者がなかなか絞れない。失言から言質をとって容疑者を追い込む火村さんはやっぱり賢い。
 
以上。
うん、いつも通り面白かった。火村さんとアリスの掛け合いがすごく好き。コンビものではこの2人が一番好きかも。。(別に脳内変換が斎藤工窪田正孝だからではない)
火村さんはいつも犯人を名指しするときも柔らかいというか紳士的だから読んでいて癒されるなあ。