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ファインダーズ・キーパーズ/Finders Keepers  (ねこ4匹)

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スティーヴン・キング著。白石朗訳。文春文庫。

少年ピートが川岸で掘り出したのは札束と大量のノートの入ったトランクだった。父が暴走車によって障害を負ったピートの家では、毎晩のように両親がお金をめぐって喧嘩をしていた。このお金があれば家族は幸せになれるに違いない……。 だが、そのカネは冷酷な犯罪者モリスが、隠遁の大作家ロススティーンの家を襲って奪ったものだった。モリスはロススティーンの小説に執着を抱いていた。だから大事なのはノートの方――そこには巨匠の未発表の文章が大量に記されていたのだ。しかし別件で逮捕されたモリスは獄中に。ついに出所したモリスは、隠しておいた「宝」を取り戻しに川へ向かったが……。(紹介文引用)
 
「ミスター・メルセデス」から始まる三部作の二作目。一作目が自分的にイマイチだったのでどうかな~と思いつつ、内容を忘れないうちに読破したい。
 
結論から言うと、こっちのほうがずっと良かった。大御所作家の未発表作品を、家庭に事情のある少年と犯罪者が奪い合うというストーリーで、キングの真骨頂と言っていい内容。少年ピートの文学への愛情や、妹ティナを守らんとする兄貴愛、家族を助けたいという一心から見つけた大金を自宅に送金する行動力には泣かせるものがある。作家の新作を自分のものにしたい、という欲望と闘う姿も人間味があっていい。一方の泥棒・モリスはこれまたミスター・メルセデスなんかメじゃないぐらいの悪党。図らずも刑務所生活が長くなってしまったが、作家の未発表ノートへの執着は衰えず。古書店や彼の生家などを攻め渡り、いよいよピートに魔の手が伸びるそのハラハラドキドキ感といったら…。捕まるなよピート!と願いながらも、そこは普通の無力な少年。家族ごと巻き込んだピンチの連続に読む手が止まらない。ところどころ、ミザリー刑務所のリタ・ヘイワースショーシャンクの空に)を彷彿とさせるシーンがあるのも嬉しい。
 
……とはいえ、主人公は前作にも登場した元刑事・ホッジズ。相棒ホリーや少年ジェロームとの仲は健在で嬉しくなってしまうが、ピートとモリスの熱い物語のほうに心を持って行かれ、今回は存在が薄くなってしまった。いや、頑張ってくれたんだけどね。
 
それにしても憎みきれないのは悪党モリスである。正直、傾倒する作家の未発表原稿が目の前で燃やされたら…私もどうなってしまうかわからない。綾辻さんがもうこの世にいなくて(興奮のあまり不吉な事を言う)、この世に一つしかない未発表の館シリーズの最終作原稿とかだったら絶対火に飛び込むね。。
 
さて、すっかり忘れていた(おいこら)ミスター・メルセデスことブレイディ。次作ではガッツリ出てくるのではないだろうか。急がなくては。