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第四の暴力  (ねこ3.5匹)

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深水黎一郎著。光文社。

集中豪雨で崩壊、全滅した山村にただ一人生き残った男を、テレビカメラとレポーターが、貪るようにしゃぶりつくす。遺族の感情を逆撫でし、ネタにしようと群がるハイエナたちに、男は怒りが弾け、暴れ回る。怒りの引き金を引いた女性アナウンサーは業界を去り、男は彼女もまたマスコミの犠牲者であったことに気づく。その二人が場末の食堂で再会したのは、運命だったのか、それとも―。強烈な皮肉と諧謔が、日本に世界に猛威を振るっている「第四の暴力」マスコミに深く鋭く突き刺さる!日頃抱いているギョーカイへの疑問と怒りが痛快に爆発する問題作、激辛の味付けで登場!!(紹介文引用)
 
深水さんのノンシリーズ系。
 
割とうっすい本なのだけど、内容はかなり濃い…。「第四の権力」と呼ばれていたマスコミの世界をブラックを交えて痛烈に批判した内容。深水さんの、マスコミやテレビ、視聴者に対する一家言をひとくさり聞かされる感じ(笑)。第一話は、災害で家族を失った樫原への執拗で無神経な取材をするクルーへの復讐。第二話は、樫原事件が起きなかった場合のお話で、プロデューサー兼ディレクターのザ・業界人が好き放題やっていたら病気に蝕まれ…という展開。第三話は、樫原事件が起きた場合の世界を描いたお話で、テレビやマスコミに敵意を向けるエリートサラリーマンの運命に日本の運命が託されている。
 
あくまでブラックユーモアとして楽しみ、本気に取らない方がいい小説かも。マスコミの異常さを表現するためにあえて大袈裟に描いているところも多々あるし。さすがに遺族にドッキリを仕掛けるとか、部下の頭を日常的にスリッパでバンバン叩くとか今の時代に有り得ないでしょ。すぐ動画撮られて拡散するよ。まあでも出てくる一般人の芸能人や業界人への食いつき方が昭和っぽくて、どちらも、昔はこうだったんだろうなあ、と思える内容ではあったけども。最終話で日本がトンデモ法案を通してはちゃめちゃな展開になるのが頂けなかったな~。法案は面白いとしても、そのまま延々と理不尽が続いて単調に終わっちゃうので…。まあディストピア小説なのかな。