若竹七海著。創元クライム・クラブ。
若竹さんの未読本。長編第2弾とあるから相当昔の作品のよう。若竹作品で唯一文庫が出ておらず、これからも出ないであろうことから(出ない理由は読めばハッキリする。キで始まる言ってはいけない言葉が乱用されまくっている)借りてきた。未読があると気持ちが悪いので。
若干の時代の古さはキャラクターの言動に感じるものの、まるで樋口有介のような甘酸っぱさ。10代の少年少女の、煙草や性に奔放だがなぜか懐かしみを感じる爽やかさがある。。。。と言いたいところだが、そう思っていたのはごく前半まで。初期作品ながらも、若竹七海は最初から若竹七海であった。もしかしたらこれは人類最初のイヤミスではないだろうか。最初はただのモラトリアム少年に見えた冬彦の性格の悪さ、口の悪さがどんどん露呈してきて辟易するし、若者のみならず冬彦の家庭環境の異常さや10代の自覚のない悪意が噴出しまくっている。そして信じていた人たちの裏切り。自分が何者であるかの葛藤。これは非常に後味が悪い。凹むことうけあい。
それぞれの脇役が随所で光っているのはさすが。説教くさい喫茶店の店長、愛人に囲われ世界を放浪しまくる母親、幼馴染のいじめっ子(こやつがまさか最後のオアシスになるとは思わなかった)などなど。
しかし、この内容と剥離している表紙とタイトルは狙っているのか…??イラストレーターの方は本当にこれを読んでなおこれを描いたのだろうか。感想を廻っていたら同じように感じた読者が多いようで、「表紙…誰やねん」と突っ込んでいる人に笑ってしまった。