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碆霊の如き祀るもの  (ねこ3.8匹)

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三津田信三著。講談社文庫。

碆霊様を祀る、海と断崖に閉ざされた強羅地方の村々。その地を訪れた刀城言耶は、村に伝わる怪談をなぞるように起きた連続殺人事件に遭遇する。死体に残された笹舟。事件の現場となった”開かれた密室”の謎。碆霊様が遣わすという唐食船とは何なのか。言耶が真相にたどり着いたとき、驚愕の結末が訪れる。(裏表紙引用)
 
刀城言耶シリーズ第9弾。
 
な、長い…。いつものことだが。地名や人名などが読みづらく、内容も濃厚なのでダラダラ何日も読みたくないな~と思って1日かけてダーッと読んだ。今回は前半に4つの怪談短編があるのでなおさら。この江戸から戦後にかけての、強羅地方にまつわる怪談を彷彿とさせる殺人事件が起こるんだな、と理解しつつ。
 
まず民俗学者が竹林宮で餓死(でも他殺)、そして宮司が物見櫓から転落死(たぶん他殺)、竹屋の次男が洞で刺殺(絶対他殺)、有力者の1人が首をつって自殺(?)、と死体てんこもり。村の合併話や村に伝わる碆霊様祭などなどを盛り込んでおどろおどろしい気配は満点。編集者の偲さんがいつもよりガッツリ言耶と絡むので漫才のようなその会話を楽しむという息抜きもあり。警察の偉い人が言耶にかなり協力的なのでやりやすかったのではないかな。
 
言耶の二転三転四転する推理は今回も健在。ただでさえ事件が多く、「まとめ」メモも77項目と正気とは思えない量。読む側を萎えさせるには充分のこんがらがりっぷり。
今回の推理は、言耶が最初に披露した真相?の方が良かったんじゃないかな。。なるほどなるほど、と一つ一つのトリックに膝を打って読んでいたらいつもの通り「そうではなく」になるのでガッカリ。そのあとの真相はあまり響かなかった。ちょこちょこ動機やなんかに無理があったような。。笹舟のことももっと何かしっくりくる理由が欲しかったな。村が4つもあるのだから、あまり目立ってなかった石糊村や磯見村なんかにも色々面白い人が出てきても良かった気がするけど。村の秘密にはビビったけどね。
 
まあ、とはいえしっかりとロジックを楽しめるし、終わり方も不気味だったので良作かと。