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世にも奇妙な君物語  (ねこ3.8匹)

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朝井リョウ著。講談社文庫。

異様な世界観。複数の伏線。先の読めない展開。想像を超えた結末と、それに続く恐怖。もしこれらが好物でしたら、これはあなたのための物語です。待ち受ける「意外な真相」に、心の準備をお願いします。各話読み味は異なりますが、決して最後まで気を抜かずに―では始めましょう。朝井版「世にも奇妙な物語」。(裏表紙引用)
 
世にも奇妙な物語」の大ファンだという朝井リョウさんによる世にも奇妙な物語集。私も何度か観たことがあるのでだいたいの世界観はわかるなーと期待して読んだ。5編収録。
 
「シェアハウさない」
泥酔していたライターの浩子を介抱してくれたのは、たまたま店に居合わせた女性。彼女の家で一晩お世話になった浩子だが、その家がシェアハウスだと知り取材のチャンスと張り切るが……。経済的に困窮しているわけでもなく、友人が少ないわけでもない社会人同士が一体何を共有しようというのか?がテーマ。こんなシェアハウス、絶対にいやだ…ぎゃー。
 
リア充裁判」
新世代法律、コミュニケーション能力促進法が成立した。能力調査会から呼び出しを受けた「非」リア充の知子だが…。海外ボランティア、コスプレパーティ、学祭ミスコン…。非リア充の知子が最後には「勝つ」話かと思いきや、もうひとひねりあった。リア充のあとに(笑)がついているように見えるぐらい意地悪な朝井さんの目線だが、実際「リア充をバカにしている層」のこともまとめてぶん投げちゃう感じ。
 
「立て!金次郎」
幼稚園教諭をしている孝次郎は、親のクレーム対策第一主義の園の方針に反発していた。目立つことが嫌いな園児を運動会の応援団長にしたい園側の要求は通るのか…。
熱血で、園児のことを本気で考えている孝次郎が最後スカっと…と思いきや、そうなるのね。。大人ってこれと同じことやってんだよなあ。
 
「13.5文字しか集中して読めな」
↑脱字ではありません。
ネットニュースライターの香織は、自分の書いたニュースのアクセス数を上げるため日々奮闘していた。幼い息子にも自分の仕事を誇らしげに語っていたが…。これはオチが読めるな笑。多くの人が同じように感じている題材だろうから、一応スカっと系なのかも。
 
脇役として活躍している俳優たちを集めたオーディションは、演出家のいない奇妙なものだった。主役を選ぶオーディションなのに、集められた俳優は個性も年齢も性別もバラバラで…。実在の俳優の名前を完全にもじっているからこそ効果のあるオチ。だからこそ会話文で事前にあの名前を出さない方が良かったのでは。しかし前4作と繋がるところもあり面白い試み。実在するある有名女優が大炎上したあとの態度のことを褒めているくだりがあるけれど、その後その女優さん薬で捕まったからいたたまれなかった。。実在の人を扱うと、年月が経ってから作品にこういう弊害がある。
 
以上。
どれも朝井さんらしい皮肉の効いた作品で、面白かった。映像化される(された?)のよね。朝井さんの皮肉って、大抵の人も同じように感じていることだったりするけれど、その「大抵の人」のこともまとめて皮肉ってくるから只者じゃないんだと思う。それを文章にして作品にできるのは凄い才能。