すべてが猫になる

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モラトリアム・シアター produced by 腕貫探偵  (ねこ3匹)

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西澤保彦著。実業之日本社文庫。

学校関係者が連続死。新任講師・住吉ミツヲは混沌とする記憶を抱えたまま事件に巻き込まれていく。彼は同僚の妻を殺してしまったらしいのだが…。封じられた記憶の鍵を握るのは魔性の女性事務員なのか?交錯する時間軸と人間関係に惑うミツヲを救うため、愛くるしい女子高生、ド派手な女大富豪、腕貫着用の公務員―三人の個性派探偵が集結。幻惑の舞台が開演する。(裏表紙引用)
 
腕貫探偵シリーズ第3弾…と言っていいのかな。腕貫さんほとんど登場しない。だから「produced by」なのかもしれないけど。
 
まあその時点でだいぶ読むテンションは下がるのだが、プロローグからいきなり似たような人物がわんさと登場し(英語科講師だらけ)、人間関係は複雑(不倫天国)、さらに殺人事件発生で頭が痛くなった…。なんとか頑張って覚えて主人公住吉ミツヲが語り手となる本編に突入。これも、ミツヲ自身が自分を「信頼できない語り手」だと自己紹介しているなど、色々と仕掛けがありそうで油断ならない雰囲気。語り口はとてもコミカルなのでほぼマンガだが。
 
で、その本編に出てくるキャラクターも皆パンチが効いている。。そもそもミツヲ自身がマザコン&シスコンだし(別にそうでもいいんだけど、性的な目で見るのはヤメロ)、母親もすごくおかしいし、父親ももちろん輪をかけておかしい。姉のユリエは以前出てきたね。腕貫さんを「だーりん」と呼んではばからない強烈キャラ。。しかもあの大富豪探偵ひろゑさんまで登場。最後の最後にまとめるのは腕貫さんだけど、実質は遅野井ちゃん(生徒、ミツヲの彼女?)&ひろゑのダブル探偵って感じ。遅野井ちゃん、ボキャブラリーがおじさんくさいしかなり変わり者で面白い。ひろゑは相変わらずぶっ飛んでるから今更何をやっても驚かないが。。ショッキングピンクのリムジンておい。肝心のミツヲのキャラがいただけないかな。。頼りないし女性を見る目がいやらしい。西澤作品によくいる男キャラって感じ。遅野井ちゃんもそうだけど、こういう普通の冴えない男性がモテるっていうのは分からなくもない。出世もしないかわりに絶対他人を怒鳴ったり殴ったり命令したりしなさそうじゃない。一番大事なことかもね。
 
真相は過去と現在がぐるぐる行きつ戻りつしてよく考えられてる感じ。だが作品世界をファンタジーというかマンガ的な位置に脳内切り替えしないとかなり疲れると思う。全員が全員、有り得ない言動ばかりでツッコミ切れない。ただこういうものと割り切れば普通かな。私としては、普通に書けばバカミスっぽくて普通に面白いのに、作品の特徴になっている性的描写が気持ち悪いせいでどうにもこうにもノレず。。あと腕貫さん唐突すぎる。警察と関係ないのになんだその詳しさは。(とか言って次も読んでしまうのだった)