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ドクター・スリープ/Doctor Sleep  (ねこ3.7匹)

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スティーヴン・キング著。白石朗訳。文春文庫。

冬季閉鎖中のホテルで起きた惨劇から30年。超能力“かがやき”をもつかつての少年ダンは、大人になった今も過去に苦しみながら、ホスピスで働いていた。ある日、彼の元に奇妙なメッセージが届く。差出人は同じ“かがやき”をもつ少女。その出会いが新たな惨劇の扉を開いた。ホラーの金字塔『シャイニング』の続編、堂々登場!(上巻裏表紙引用)
 
「シャイニング」の続編。オーバールックホテルが爆発炎上してから30年後の物語。
実は先日、映画を先に観てしまったのでだいたいの展開を知った状態で読んだ。ほぼストーリーは原作に忠実だったのだな、とホっとする。「シャイニング」の映画がアレだったからね。。映画ファンの意見ではおおむね「続編はいらなかったのでは」で一致していた模様でほぼ同意見だが、原作のいいところが割愛されているのでそりゃそうだろうな、とも思う。「孫のプリンに煙草の吸殻を押し付ける祖父」「育児放棄でオムツが汚物でずり下がった赤ちゃん」「ホスピスで患者の身体に痣をつける職員」などのえぐいエピソードはまるまる映画ではカットされているか短縮されていた。ダンが行きずりの女性のお金を盗んだくだりはかなりダンの精神に影響を与えるので、映画でももっと重要視して欲しかった。
 
まあ映画との違いについてはそこまでとして。
アル中オヤジになってしまったダンと、生まれついて強力な「かがやき」を持った少女アブラとの交流はとても良かったと思う。年齢差は親子ほどあるが、屈折した中年男が守るべき少女と出会ったことで本来持つ優しさや勇気を取り戻すことができた。少女やその両親が抱えていた心の闇にも踏み込むことができて、結果オーライではないけども色々な人の人生を前に進めることが出来たと思う。物語での敵役となる「真結族」のリーダー、ローズとの戦いはあっさりしたもんだったが…。あの人らも考えてみれば可哀想だと思う。人を殺して長生きして放浪して、それができたからなんだっていうのか、って私なんかは思うからね。
 
続編を単一の物語として読めばまあ綺麗なもんで、悪くない出来かと思う。人生は全て繋がっていくし人と人の絆は美しい。綺麗すぎていい話すぎて、キング好きとしてはちょっと物足りない気もしたが…。最近はこんな感じがいいのかな。